写真1●2013年夏モデル発表会で「ツートップ」を発表するNTTドコモの加藤薫社長
写真1●2013年夏モデル発表会で「ツートップ」を発表するNTTドコモの加藤薫社長
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 2013年夏モデルで話題となったNTTドコモの「ツートップ」戦略――。韓国サムスン電子の「GALAXY S4」とソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia A」の2機種を販売面で優遇する施策は、販売台数の面では一定の成果が得られている(写真1)。

 2013年7月26日に開催された2013年度第1四半期(2013年4月~6月)決算発表時の数字は、GALAXY S4の販売台数が約55万台、Xperia Aは約110万台(関連記事:NTTドコモの1Q決算は増収減益、「ツートップ戦略は一定の成果」と加藤社長)。特にスマホ初心者をターゲットにしたXperia Aは、フィーチャーフォンからの買い替えが約62%にもなっているという。決算発表に先立ち開催された販売関連施策の説明会でも、同社販売部長の鳥塚滋人氏は「iモード機からの移行に大きな意味があった」と述べている(関連記事:ドコモショップ1800店に8月からタブレット導入、店舗運営を効率化し待ち時間短縮狙う)。

 フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行に寄与したツートップ戦略だが、課題はここからだ。果たしてスマホ“初心者”はドコモのサービスを活用するのだろうか。サービスを使ってもらう上でのポイントの一つが端末購入の入口となる全国2400店のドコモショップだ。特集の第1回第2回で、“総合サービス企業”として様々な商材を扱うドコモショップでの取り組みを解説した。以下では“総合サービス企業”化の背景とその方向性に焦点を当てる。

なぜ“総合サービス企業”なのか

 ドコモは“総合サービス企業”としてなぜ様々な商材を扱うのか。そのベースにあるのが、同社が2011年11月に発表した「中期ビジョン2015」である。この中期ビジョン2015で、同社はモバイルを核とした総合サービス企業を目指すことを宣言。様々な分野の産業やサービスを融合することで新市場を創出し、メディア・コンテンツ事業、コマース、金融・決済など「新領域」における収益を2015年度に約1兆円にすることを目標に掲げる(関連記事:NTTドコモの4-9月期は減収減益も好調に推移、新周波数帯は「900MHz帯も取りに行く」)。2013年度第1四半期(2013年4月~6月)決算発表では、今年度の年間目標7000億円に向けて順調に新領域の収入が拡大しているとしており、第1四半期実績が1500億円だったことを公表している。

 この「『新領域』における収益を2015年度に約1兆円にする」という目標は、世界的にも業界関係者の注目を集めている。2013年2月にスペイン・バルセロナで開催された世界最大の携帯電話関連展示会・カンファレンス「Mobile World Congress 2013」の基調講演に立ったドコモの加藤薫社長は「新規事業から得られる収入を110億ドル(約1兆円)にする」と説明(関連記事:ドコモ加藤社長が講演、世界の携帯関係者に向け「新規事業で1兆円」を宣言)。OTT(Over the top)プレイヤーによる上位レイヤーサービスの寡占化が進み、携帯電話事業者の“土管化”が数年前から懸念されているなか、世界の業界関係者に、新たな携帯電話事業者のロールモデルを示した格好だ。