NTTドコモが、提供するサービスを急拡大させている。モバイルを核とした「総合サービス企業」への転換を急ぐドコモにとって、これから進む道は同社にとって経験のない未知なる領域だ。

 確かにドコモには、総合サービス企業を目指せるだけの大きなポテンシャルがある。通信会社としてスマートフォンを販売し、「ドコモショップ」という店舗網を全国に持っている。その数2400店と、ちょっとしたコンビニ並みの規模だ。スマホと店舗というO2O(オンライン・トゥ・オフライン)のインフラを自前で両方持つことがドコモの強みであり、強力な顧客基盤とともに、この顧客接点を生かすも殺すもドコモ次第となる。

 ドコモは今、野菜に体温計、保険、さらには旅行など、相次いで新商品や新サービスの提供と、そのための企業提携や買収に乗り出している。取り扱うコンテンツの広がりについては、明日の第2回で詳しく述べるが、単なるスマホ通販にとどまらず、2400カ所の店舗網を絡めたリアルビジネスとの相乗効果を最大限に引き出すことで、ネット通販の覇者である楽天やアマゾン・ドット・コムにはない特異なビジネスモデルを構築しようとしている。

 振り返って、ドコモの差異化要因である我々にとっても身近なドコモショップについて見てみると、現状では誰の目にも課題が山積みであることは明らかだ。スマホの機種変更では80~90分待ちが当たり前。家族で訪れると、全員の対応が済むまでに半日がかりになることも珍しくない。貴重な週末が機種変更だけで終わってしまう。それほど混雑が激しい。

写真1●「タブレットアラジン」を持つ「ドコモショップ渋谷店」のスタッフ
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 そこにきてドコモは、ドコモショップでスマホ以外に婦人体温計といった健康機器まで扱い出した。ドコモショップのスタッフは、これまで想像もしていなかったであろう“変わった”商材も取り扱っていかなければならなくなった。ドコモ側が何も対策を打たなければ、ドコモショップでの待ち時間はさらに延びるのは必死だ。そして顧客満足度は落ちる。他社スマホへの乗り換えが後を絶たないドコモにとって、既存顧客の満足度を高め、つなぎとめる経営努力が欠かせない。

 ドコモの経営陣が描く総合サービス企業としての「巨大な絵」と、商材の広がりと待ち時間の拡大に疲弊する現場。このギャップをどう埋めていけばよいのだろうか。

 ご存じの通り、ドコモショップを切り盛りするのはドコモの社員ではない。代理店のスタッフたちだ。彼ら彼女らへの支援やサポートが急務になってきている。

 そこでドコモが投入を決めた切り札が「タブレットアラジン」である(写真1)。