QCD(品質・コスト・納期)のどれを優先すべきか。プロジェクトを進める時に必ず明確にしておくべき優先順位であるが、そうはいってもなかなか割り切って順番を付けられないものだ。
リクルートでも随分前から、QCDの優先順位はプロジェクト計画時に必須で定める事項になっている。それでもビジネスサイドの事業部門としては当然、「どれも重要」となりがちである。
この教科書通りともいえる「QCDの優先順位付け」のフレームによって、ビジネスを成功に導いた例を紹介したい。
リクルートには年に1回、現場の人がビジネスアイデアを発案し、役員が審査するという制度がある。グランプリなどを獲得した優秀なビジネスプランは事業化が進められる。「じゃらん」や「ゼクシィ」など、現在のリクルートを代表するようなサービスも、この制度から生まれた。
そんな年に一度の制度で「ある学習用のコンテンツをユーザーがいつでも見たい時に自由に見られる」というビジネスプランがグランプリに選ばれ、事業化されることになった。このサービスは本来ならば授業が行われる施設に足を運ばずとも、自分のパソコンやスマートフォンなどから視聴できるというものだ。
このビジネスの肝として、プランの発案元であるビジネスサイドは「いつでもどこでも持ち運び可能」というコンセプトを掲げていた。それを実現するため、コンテンツをダウンロードして視聴できる、という世界観も共有していた。
しかもサービスリリースの希望時期は、本格的に開発プロジェクトが編成されてから、きっちり半年後に設定されていた。
だが「これは危険だ」と、当時このプロジェクトにアサインされた開発サイドのリーダーは直感した。