広島県呉市で若い女性の遺体が遺棄され、未成年者を含む男女7人が逮捕されるという事件が起こった。報道によると、スマートフォンなどで動作するメッセージアプリ「LINE」が事件のいくつかの場面で使われたという。このため「LINE」の文字を見出しに使ったセンセーショナルな記事が目に付く。

 これまでスマートフォンが青少年にもたらす功罪について分析し、LINEをはじめとする各種サービスの使われ方を発信してきた筆者にとっても、非常に大きな意味を持つ事件となった。そこで今回は予定を変更して、この事件にかかわる問題を読み解くことにする。

 今回の事件は、まだ全貌が明らかになっていない。私見を書く前提として、筆者が報道と個人的に収集した情報などから把握した全体像を整理しておく。

 事件に関与したのは7人で、成人男性1人と未成年者の男女6人。成人男性と未成年者の一部は、ID掲示板と呼ばれているサイトで知り合ったようだ。その中の1人が元同級生の未成年者(被害者)とLINE上で口論して激高。仲間にLINE上で連絡を取り、被害者をLINEで呼び出して、車に連れ込んで暴行し、山中に遺体を遺棄した。

 以上のような状況だったとした上で整理すると、今回の事件でLINEが果たした役割は「成人男性と未成年が知り合ったきっかけ」「犯行に至る連絡手段」「事件の呼び水になった口げんかの場」の大きく3点である。この3点について、筆者の考えを整理する。

成人男性と未成年者が知り合ったきっかけとしてのLINE

図1●ID掲示板のイメージ

 筆者が関係者から聞いた話では、運転手を務めた成人男性と未成年者たちは、ネット上のID掲示板で知り合ったという。検索サービスで「ID掲示板」で検索すると、検索結果一覧には10以上のID掲示板サービスが並んだ。

 ID掲示板は、LINEをはじめとするメッセージアプリのIDを公開して、見知らぬユーザー同士を結び付ける掲示板で、LINEをはじめとするメッセージサービスの提供者とは関係なく運用されている。スマホなどからも利用でき、ユーザーがLINEのほかカカオトークやcommなどのメッセージアプリで使うIDを交換し合って、友達になる場を提供している。

 例えば、図1のような自己紹介が数多く記載されている。これはわかりやすくするために、研究室に出入りする学生に教えてもらいながら筆者が作成した架空のID掲示板である。