写真●Microsoftが運営する、IE6からの移行を支援するサイト「The Internet Explorer 6 Countdown」。IE6もカウントダウン中だ
写真●Microsoftが運営する、IE6からの移行を支援するサイト「The Internet Explorer 6 Countdown」。IE6もカウントダウン中だ
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 以前、Microsoftを取材したときに聞いた話だ。新しい環境の評価テストをする際に、業務に使うWebページを古い環境で表示させて実物大にプリントアウトし、それを新しい環境の表示に重ね合わせて、ミリ単位で表示が合致するかどうかを確認している企業ユーザーが少なくないというのだ。

 ほんの少しでも表示が異なれば、熟練したユーザーであればあるほど作業の効率が落ちてしまうのは当たり前の話で、そういう意味ではWindows XPのデフォルトブラウザであるIE6と、今のIE10や新しいIE11の表示の違いを気にするユーザーの心配も理解できる。

 その一方で、新しくデザインされているページは、IE6のような古いブラウザでは、うまく表示ができなかったり、表示はきちんとできているのに、フォームへのデータ入力などで支障が出てしまうこともある。各社サービスもIE6のサポートを終了しているところが少なくない。こうしたページをIE6で開くと、フリーズしてしまうことさえあるようだ。

変わることを前提にしたシステム運用を

 いずれにしても、パソコンをネットワークに接続し、何らかのかたちでインターネットとのやりとりをする以上、古い環境を使い続けていると、エンドユーザーが混乱してしまう機会も多くなる。ユーザーによってはフリーズしているのはブラウザだけなのに、強制的に電源をオフにしてしまうかもしれない。それによってローカルストレージに何らかの支障が出る可能性もある。

 エンドユーザーにとっては、10年ぶりに環境が変わるわけで、混乱が生じるのは当たり前だ。だが、IT事情に通じた管理者は、その間、ITの世界が変わり続けいることを認識していたはずだし、そのことを知った上で、エンドユーザー環境が変わらないようにしてきた。それは、エンドユーザーへの配慮でもあったし、対応や教育のためのコストをかけないための方便でもあった。でも、これからは、少し認識を変えなければならないかもしれない。変わるのが当たり前だという認識でシステムを運用し、それをエンドユーザーに理解してもらえるようにしないと、最終的にきわめて大きなツケが回ってくることになるかもしれない。

 Windows XP終了まで、あと37週。

山田 祥平(やまだ しょうへい)
フリーランスライター
1980年代、NEC PC-9800シリーズ全盛のころからパーソナルコンピューティング関連について積極的に各紙誌に寄稿。Twitterアカウントは @syohei