3Dプリンターを最大限に活用しているのは米Fordである。Fordは、Dearborn (ミシガン州) に拠点を置き、アメリカ第二位の自動車メーカであり、早くから工業用の3Dプリンターを利用している。

工業用3Dプリンターから汎用プリンターへ

 Fordは早くから工業用3Dプリンターを導入し、製品開発を行ってきた。Fordによると、Transit Van (大型のワンボックスカー) に搭載するEcoBoostというエンジンの開発では、主要部品のプロトタイプを3Dプリンターで製造した。オイル・フィルター・アダプターやエキゾースト・マニホールドなどのプロトタイプが3Dプリンターで製造された。これはラピッド・プロトタイピングという開発手法で、使用された3Dプリンター技術はStereolithography (レーザーを液体ポリマーに照射し断面形成)、Laser Sintering (微細粉末をレーザーで焼結)、3D Sand Casting (砂型での鋳造) などである。

 Fordは工業用3Dプリンターに加え、最近では、MakerBotなど普及型のDプリンターを導入し、研究開発を進めている。その中心が、Ford Silicon Valley Lab (シリコンバレー研究所)である。この研究所はPalo Alto (カリフォルニア州) に位置し、企業や大学などと提携し、研究開発を推進している。研究テーマはUser ExperienceとBig Data。User Experienceでは、Androidから自動車のデータにアクセスするためのプラットフォームを公開している。

 更に、User Experienceの一環として、ゲージ (ダッシュボードの計器類) のユーザ・インターフェイスの研究を、Ford開発部門と共同で行っている。研究所で開発したプロトタイプのデータ・ファイルを開発部門に送信し、3Dプリンターで出力し、製品評価を行っている。研究対象はシフト・ノブ、ゲージ、ディスプレイ・モジュールなどで、ラピッド・プロトタイピングの手法で開発を加速させている。