ITの重要性が増す一方で、情報システム構築プロジェクトの失敗が後を絶たない。ビジネスプロセス・アーキテクト協会(BPA-P協会)はプロジェクトの成功確率を上げるヒントを得るため、「プロジェクトのつぶやき」研究チームを立ち上げた。本連載は研究チームによる成果の一端を、エピソード形式で紹介している。
この連載では、九つの失敗プロジェクト事例を紹介してきた。
事例2:人事ローテーションから外れるシステム部員
事例3:安すぎる見積もり金額に要注意
事例4:システム運用の実態が見えない原価計算
事例5:システムの必要性を思いつきで判断するトップ
事例6:自前でシステムを作れない情報システム部門
事例7:プロジェクト体制を「ベンダーにお任せ」は危険
事例8:全社システムの状況を把握できないユーザー企業
事例9:プロジェクトを振り回す素人CIO
今回と次回は本連載のまとめである。今回は、九つの事例を通じて学べる四つの教訓を披露する。次回は、これらの失敗事例を分析した結果を基に、BPA-P協会が提唱する顧客主導型のシステム構築・管理手法について紹介する。
教訓1
中身を知らずして、目先の金額で判断するべからず
システムを刷新・構築するにあたり、RFP(要求依頼書)に対するベンダーの提案を検討したり、ベンダーと実際に交渉したりする際は、ベンダーが提案した費用の中身(内訳)をきちんと把握・検証する必要がある。
何を当たり前のことを、と思う方が多いかもしれないが、これがなかなかできない。事例1「ベンダーべったりの態度が失敗を招く」、事例3「安すぎる見積もり金額に要注意」、事例4「システム運用の実態が見えない原価計算」、事例6「自前でシステムを作れない情報システム部門」はいずれも、この教訓を無視したためにトラブルが生じた。