今や、コンピュータ市場をけん引しているのは、スマートフォンやタブレット端末などのスマートデバイスとなった。「どこでも」「簡単に」「すぐに」使えるという利便性で、ビジネス分野でも広がりを見せている。時代はPCの代わりにスマートデバイスを利用する「ポストPC時代」に入った。

 「ポストPC時代」とは、2010年6月に当時の米アップルの最高経営責任者(CEO)、故スティーブ・ジョブズ氏が講演で語った言葉だ。ちょうどスマートフォンやタブレット端末といったスマートデバイスが一般のユーザーにも利用されるようになってきたころだ。

 かつてコンピュータは非常に高価なものであった。1970年代、コンピュータはメインフレームという大きな装置で、専用のオペレータだけが操作できるものだった。1990年代に入り、企業でPCが利用され始める。当時はまだ複数の社員が1台のPCを共有して資料作成や計算などに利用する例が多かったが、このころから一般のビジネスパーソンでもコンピュータを利用するようになった。

 そして2010年以降になると、スマートデバイスの急速な普及に伴い、一人の社員がPCのほかにも、複数のスマートデバイスを利用する時代を迎えた。

ITのコンシューマ化がもたらした大きな変化

 我々を取り巻くIT環境はこの数年で急速に変化した。FacebookやTwitterを代表とするSNSをはじめ、スマートデバイスやクラウドサービスなど、一般ユーザーが利用できるコミュニケーションや情報収集の手段は多様化している。

 その変化は企業においてもワークスタイルを変化させ、ビジネススピードを加速させている。ITのコンシューマ化(コンシューマライゼーション)という現象が起きているのだ。

 これまでのIT環境は、まず企業の方が先行して新しい技術や仕組みを導入し、そこで技術や端末が一般化したあとで、ユーザー側に広く浸透していくのが主流だった。しかし現在は、スマートデバイスやクラウドストレージなどを、一般のユーザーが個人的に利用してその便利さに気付き、それをビジネスで利用するという逆の流れが起きている。

図1●IT利用環境の変化に伴うITのコンシューマ化

 これがITのコンシューマ化と言われている現象だ(図1)。一般ユーザーのスマートデバイスやクラウドの利用は、それが意図的であるかないかに関わらず、ビジネススタイルに大きな変化を与えるという事実は無視できない。