2013年7月6日、東京大学情報基盤センター特任講師の金子勇氏が急性心筋梗塞で死去した(関連記事)。42歳だった。
金子氏は、ファイル共有ソフト「Winny」の作者として著名だ。Winnyは利用者による著作権法違反が多発し、その影響で金子氏も2004年5月に著作権法違反幇助の疑いで逮捕・起訴された。2006年12月、京都地方裁判所は有罪判決を下した。金子氏は大阪高等裁判所に控訴。すると大阪高裁は2009年10月に地裁の判断とは逆に無罪判決を下す。それに対して、検察は最高裁判所に抗告。結局、最高裁は2011年12月に検察の上告を棄却し、7年半にわたる裁判は終わった。
Winnyというソフトを介して著作権の侵害が起き、著作権者が大きな被害を受けたことは事実である。その一方で、ソフトの開発者が責任を問われるのはおかしいという声が逮捕直後から相次ぎ、多くのITpro読者も「逮捕は間違っている」と感じていた(関連記事)。
長い時間をかけて金子氏は無罪を勝ち取り、ソフト開発者が、開発したソフトによって起こされた犯罪行為の責任を問われることはなかった。しかし、法体系および捜査当局がITの進化に付いていけていないということを多くの業界関係者は感じたはずだ。そしてその状況は、昨年起こった「遠隔操作ウイルス」による誤認逮捕の発生などを見ても、大きくは変わっていないのかもしれない。
いずれにしても、金子氏は先駆者であった。死去に際し、日本のインターネットを引っ張ってきた慶応義塾大学・教授の村井純氏は「金子勇さんはソフトウェア開発者として極めて貴重なパイオニアでありヒーロー」だったと述べた(関連記事)。
金子氏のご冥福をお祈りするとともに、あらためて金子氏およびWinnyに関するITproの記事を以下にまとめた。
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Winnyの技術解説
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有罪となったWinny著作権法違反幇助事件の地裁判決
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【北岡弘章の「知っておきたいIT法律入門」】
- (1)ソフトウエアの開発自体は罪に問われていない
- (2)裁判所が認定している客観的事実
- (3)著作権法違反幇助と技術的検証は両立すると判断
- (4)あいまいさ許容せざるを得ない幇助犯の成立条件
- (5)捜査を困難にする「もの」は問題視される