2012年10月にホールディング制に移行し、人材や住宅、結婚など、様々な分野の情報事業を担う企業の集合体となったリクルート。1~2カ月に1度の割合で「R-techセミナー」と題する社内勉強会が開催される。

 主催はグループのIT(情報技術)機能会社であるリクルートテクノロジーズ。約80人のビッグデータグループのメンバーが、グループ各社の情報提供サイトに盛り込んだ新機能やその成果について発表する。ほかのグループ企業のメンバーが熱心に耳を傾け、自分の担当する事業にどう生かせるかを考える。

 ビッグデータグループの主要メンバーの1人が西郷彰シニアアナリスト。社内のデータサイエンティストとして、グループ各社のネット事業で蓄積したデータを分析し、顧客の行動特性を探り当てて、商品購入やサービス利用の決め手を見つける(関連記事:「『面白いじゃん』と言わせたい」)。

リクルートグループのIT機能会社、リクルートテクノロジーズの西郷彰シニアアナリスト
(写真 山西英二)

 リクルートが情報誌からネットへと事業の軸足を移す中、各業界で台頭するネット事業者との競争は激化するばかり。紙媒体での強みだった歴戦の営業部隊がコストアップ要因になることもある。

 2012年10月にはホールディング制に移行し、各事業部門を分社して身軽な体制を作った。組織改革ばかりが注目されるが、本質は意識変革にある。パワフルな営業集団が、データに基づく頭脳集団に変貌することで、ビッグデータ時代の情報ビジネスを制する。

 その象徴的な人材が「データサイエンティスト」。グループ各社のネット事業で蓄積したデータを分析し、効果的に成功事例を生み出す。そこから分析手法を確立し、さらに横展開してグループとしてのシナジーを生み出す。こうして力任せではない、“大人の会社”になろうとしている。

「儲かるの?じゃあうちでも」

 その代表が、西郷氏。2009年11月入社と社歴は浅いものの、メーカーや調査会社で長く分析業務に携わってきた。

 「分析者」という肩書きでリクルートのインターネットマーケティング室に配属された西郷氏だが、当時のチームはたった2人。「リスティング広告やSEO(検索エンジン最適化)などに携わる部署の端っこにポツンと2つ席があった」と苦笑する。リクルートは既にネット事業に力を入れ始めていたが、日々の業務で蓄積される大量のデータが有効利用されているとは言えない状況だった。

 「リクルートには広告を出稿する企業と情報にアクセスするユーザーの双方の情報が集まっていた。量が多く深い。これはチャレンジしがいがあると思った」

 そこで西郷氏は猛然とデータ分析に取りかかる。早々に成果が出た。飲食店のクーポンを提供する「ホットペッパー」の会員向けメールマーケティングだ。