筆者は法律や政治の専門家ではないが、今回のネット選挙運動解禁についてサイバーセキュリティを切り口に情報を収集してみると、現状の選挙運動に関する「不思議」がいくつも見えてきた。本原稿だけでなく、総務省が公開している「インターネット選挙運動解禁の概要」にもぜひ目を通しておいてほしい。

 例えば、選挙期間以外の選挙運動は禁止、選挙運動としての戸別訪問は禁止、そして、もはや風物詩とも言うべき選挙カーによる朝8時からの名前連呼――などである。投票の結果により当落(勝敗)が決まり、候補者の人生や関係者の利害、そして地域や国の行く末がかかってくるのだから、そのルールが厳密に取り決められるのは当然だろう。

ルールを守り勝利を目指すのはスポーツ競技と同じ

 考えてみると選挙とは、候補者(競技選手)と政党(所属チーム)があり、決められたルールに則り制限時間を精一杯戦い抜き勝負を競い合うという、スポーツ競技に似た側面がある。スポーツ競技でも、厳密に決まっているルールを競技者が守り、全力で競い勝利を目指している。

 勝負が白熱してくると、選手はルール違反さえしてでも勝とうとするので、適切な審判の関与が重要とされる。審判はルールに則り競技を進める役割以外に、競技を盛り上げる任務も負っている。新しいルールに適応するために審判も常に技術や判断を向上させている。

 競技者には、ルールを熟知したうえで徹底的にその盲点を突くという作戦をとるものもいる。技術革新やルールの研究などによって、新しい作戦や戦術が考案される一方で、競技としての公平さや面白さを維持するためにルールを改訂するという、別の側面の戦いも繰り返されてきた。競技の世界(特にプロスポーツ)では、実際の勝負の前から勝負は始まっているのである。

 さてネット選挙運動である。この選挙運動についても競技に例えて考えてみたい。要は、ルールを正しく守って勝てばいいのである。