参議院選挙の投開票が2013年7月21日に迫るなか、主要政党がTwitterやFacebookといったネット上の口コミ分析に力を入れ始めた。自民党は6月19日に分析の専門チームを編成。リポートを毎日、全候補者に送っている。民主党も独自の分析ツールを導入した()。

表●参院選における主な政党の口コミ分析の取り組み
表●参院選における主な政党の口コミ分析の取り組み
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 各党とも、流動的な有権者の関心や政策意識、支持状況を口コミから読み解き、活動に反映させていく考え。「有権者の関心事に焦点を当て、臨機応変にネットや街頭演説で候補者の意見を発信する」(民主党の馬淵澄夫幹事長代理)ことを目指す。今回の参院選が、ネットから民意を読む“ビッグデータ選挙”の試金石となる。

 今回の選挙公約に口コミ分析結果を積極的に反映させた政党もある。みんなの党が「アジェンダ(選挙公約)2013」で、「みんなで解決する子育て・介護」と社会保障の政策を強調したのは口コミ分析の成果だ。「増税阻止」「公務員削減」など「小さな政府」を主張する公約を並べたこれまでとトーンはやや異なる。「訴えたい政策と有権者の関心が高い政策とのバランスを取った」と、分析を指揮した松田公太参議院議員は説明する。

 同党の分析プロセスはこうだ。まず政策立案の視点を広げるため、議員ら分析チームで政策キーワードを自由に想起。130個弱のキーワードをジャンル分けし、13年4~5月のネットの登場回数を集計した。「消費税」や「憲法」など定番のジャンルを上回っていたのが、「子育て」だった。

 キーワードの文脈にも注目した。マスメディアで頻出する「待機児童」は、ネット上では多くない。ブログと検索回数で1位に付けたのが「保育園」で、しかも市町村名などと組み合わせた検索回数が多い。そこから「母親が保育園の情報集めに苦労している」などの仮説が浮かび上がった。こうして「保育園の株式会社参入を国として推進」「地域主導の公教育」などの政策をまとめた。

 個々の候補者がネットでどうつぶやくべきかにも、コツがありそうだ。今回、複数の党の候補者に、ネット選挙運動を指南しているジェイコスの高畑卓社長は口コミ分析の観点から「2-6-2の法則」を提唱する。「政策の主張はつぶやきの2割にとどめ、6割は選挙運動での出来事などの日常、2割は趣味など私生活を発信する」比率がよいという。「通勤時間帯の7~9時は働く人の活力になる内容を投稿する」などの工夫も必要だ。

 ネットでの政策発信はどの政党も強化している。今後は分析結果を直視して「政党や候補者の独り善がりを正し、政策がより広く伝わるようにする」(高畑氏)ことが重要となる。そうした効果が出れば、口コミ分析も政治のツールとして定着しそうだ。