2014年4月に迫るマイクロソフトのOS、WindowsXPのサポート終了が、オフィスや家庭向けのパソコンだけでなく、組み込み機器を扱うエンベデッド市場にも新たなビジネスチャンスをもたらしている。製造や流通、医療、広告といった様々なユーザー企業の情報システムでもWindowsXPを搭載した機器が稼働しており、これらの見直しが始まるからだ。さらに、WindowsXPで組み込み機器を開発してきたメーカーにも今後は新しいOSを搭載したモデルが求められ、製品化に拍車がかかるはずだ。

 「今年度に入って多くの案件が生まれてきているなど、新規のビジネスが拡大してきた」と、エンベデッド用OSに携わるITベンダーは話す。「アベノミクスによる円安・株価上昇に伴って製造業の設備投資が上向いてきた今、WindowsXPのサポート終了は新製品に切り替えてもらういいタイミングかもしれない」という声も聞こえるなど、エンベデッド市場はちょっとした「特需」に沸いているようだ。

意外に多いXPの組み込み活用

 エンベデッド市場が扱う製品は非常に多岐にわたる。たとえば製造ではFAパソコンや生産ラインの表示・制御用システム用の機器、測定装置があるし、流通ではPOSやキオスク端末、デジタルサイネージ用の端末までも対象が広がる。このほか、金融用の端末やATM、医療用の診断や検査装置なども組み込み機器といえる。

 こうした機器では一般に、同じWindows系でもエンベデッド用OSが導入される。組み込み機器を開発するメーカーは、エンベデッド用OSの供給やサポートの時期を考慮しながら開発・販売するので、最近登場した組み込み機器はサポート終了などを気にせずに使えるものばかりといえる。

写真1●NECインフロンティアの一体型POS製品「TWINPOS5500Ci」はOSに「Windows Embedded POSReady 2009」を搭載している
写真1●NECインフロンティアの一体型POS製品「TWINPOS5500Ci」はOSに「Windows Embedded POSReady 2009」を搭載している
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 「事前に把握しているOS情報に応じて製品を開発しているため、ユーザー企業は機器のサポート終了などを心配する必要はない」(NECインフロンティアのiアプライアンス開発本部ソフトウェア技術グループの柳澤徹グループマネージャー)。NECのPOS端末でも、新しいエンベデッド用OSを搭載している製品が主流だ(写真1)。

 だが人気OSとして高いシェアを持つWindowsXPだっただけに、多くのメーカーで組み込み機器のOSとしても利用され、そのまま使い続けられているケースが意外に多いという。

 サポート終了によってセキュリティなどの課題が発生するのはオフィスや家庭用の市場と同じ。しかも企業向けのシステムとなれば、大規模な再構築につながる可能性もある。そこで自社の得意分野を絡めたソリューションを提案できれば、ITベンダーにとっては新たな顧客獲得につながるチャンスになる。

 「エンベデッド用のWindows7やWindows8といった新しいOSへの移行ビジネスだけでなく、これをきっかけに既存システムの見直しにも結びつくのでは」と、期待するITベンダーは多い。