「2013年5月24日、国民一人ひとりに固有の識別番号を割り当てて社会保障給付や納税を管理できるようにする「共通番号(マイナンバー)法」が可決された」と、「日経コンピュータ」6月13日号は伝えている。

 しかし、「国民一人ひとり」に個人番号を割り当てる、という文章は、マイナンバーの現実を正確に表現できているのだろうか。連載第4回である今回は、マイナンバーが誰に割り当てられるのかという点について検証しよう。

外国人にも割り当てられるマイナンバー

 マイナンバーは、日本国籍を有する人(日本人)だけでなく、日本国籍を有しない人(外国人)にも割り当てられる。日本人のうち、個人番号が割り当てられるのは、2002年8月5日以降、いずれかの市区町村に住所がある/あった人である。外国人のうち、個人番号が割り当てられるのは、2012年7月9日以降、いずれかの市区町村に住所がある/あった人である。

 2002年8月5日は、住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)の稼働日であり、2012年7月9日は、外国人への住基ネット運用が開始された日である。何のことはない、住基ネットにデータがある/あった人にだけ、個人番号が割り当てられるということだ。ややこしいのは、日本国籍を離脱して外国移住した人だが、これも同様に住基ネットにデータがある/あった人ならば、個人番号が割り当てられる。

 言い方を変えると、日本人のうち、2002年8月5日以降いずれの市区町村にも住所がない人には、個人番号が割り当てられない。すなわち、10年以上「住所不定」を貫き通している日本人と、10年以上「外国」にいる日本人(いわゆる長期在外邦人)は、個人番号が与えられないことになる。総務省によるマイナンバーの設計が、住民基本台帳にかなり強く依存しているため、住基ネットにデータのない日本人には個人番号が割り当てられないという事態になってしまっているのだ。

 しかし、長期在外邦人や「住所不定」者に個人番号が割り当てられないと、マイナンバーのシステム全体に不都合が生じる。在外邦人であっても、過去に国民年金に加入していた場合があるし、現在も日本国内の固定資産税を払っている場合があるからだ。総務省は何らかの形で、全ての日本人に個人番号を割り当てる方策を考えるべきなのだが、現時点ではその検討は十分に進んでいない。

 外国人であっても、日本国内に3カ月以上滞在する場合は、市区町村に住所が置かれ、個人番号が割り当てられる。また、いわゆる特別永住者も同様に個人番号が割り当てられる。

 なお、日本国籍を取得した場合、あるいは日本国籍を離脱した場合でも、個人番号は変更されない。また、いったん個人番号が割り当てられた外国人は、再入国の際にも同じ個人番号が割り当てられる。一度割り当てられた個人番号は、原則として一生変更されない。ただし、日本国内に連続して3カ月以上滞在したことのない外国人には、個人番号が割り当てられることはない。

 端的に言えば、個人番号が割り当てられるのは、「国民一人ひとり」ではなく、「日本に住んでいる人」なのだ。ただし、日本に住んでいる人が将来、海外に移住したとしても、個人番号はそのまま継続される。消えてなくなるわけではない。

 例として、川村利夫が、日本に留学に来ている米国人留学生のTURNER ELIZABETHと結婚して、神戸に住み始めた場合を考えてみよう。