前回、第一線のSEマネージャーの方にぜひ行ってほしい4つの行動について述べた。その行動とは以下の4つである。

  1. 顧客を一人でぶらっと訪問する
  2. 部下がやっている仕事やプロジェクトを自分でレビューする
  3. 営業と積極的にビジネスの話しをして販売活動に強くなる
  4. 社内の支援部門やパートナー企業に顔を出す

 これらは、上手くできるかどうかを別にすれば誰にでもできる事柄である。足があれば顧客にも行けるし、パートナー企業にも行ける。口があればSEや営業と話ができるし、仕事のレビューもできる。

 SEマネージャーは、この4つの行動を継続してやっていれば必ず顧客や営業・SEに信頼されるようになる。その中心となるのが、“顧客を知る”ために行う「一人でぶらっと訪問」である。それは、SEマネージャーは顧客が分かっていないと、ほかの3つの「SEがやっている仕事やプロジェクトのレビュー」や「営業とビジネスの話をする」「社内の支援部門などに顔を出す」ことができないからである。もちろん、SEや営業に対する適切な助言や指導もできない。

 SEマネージャーの方は、ぜひ“ぶら訪問”をやってほしい。一人で顧客をアポなしで訪問し、部課長や担当者と話す。すると、顧客の状況や部課長などの考えや本音が分かる。また、SEの責任者として部課長にプロジェクトの見通しや問題点などを話したり助言などをすると信頼も得やすい。その上、SEや営業の顧客での仕事振りも分かるなど様々なプラスがある。

 そこで今回は、このSEマネージャーの“ぶら訪問”について詳しく説明したい。

SEマネージャーは逃げていないか

 ここにある数字がある。これは筆者が数年前に調査したものだ。調査の母集団は、SEマネージャーが約500人、会社数が約100社。その結果、全SEマネージャーのうち、担当している全顧客を一人で訪問しているSEマネージャーは16%、一部の顧客を一人で訪問している人が37%、一人では顧客を訪問していない人が47%であった。これが日本のIT企業のSEマネージャーの実態である。

 半分近くのSEマネージャーは、一人では顧客を訪問していない。きっと彼ら彼女らは、顧客との定例会議や年始年末の挨拶などに営業やSEと一緒に訪問するのであろう。つまり団体訪問である。

 一方、この数字を顧客側から見ると、一部の顧客なら訪問しているSEマネージャーもいるので、顧客の70~80%はSEマネージャーが一人で訪問していないといった感じになるだろう。言い換えれば、70~80%の顧客はIT企業の技術責任者であるSEマネージャーとプロジェクトなどについて顔を突き合わせて話す機会がないのだ。

 この状況をどう考えるかは読者の方に任せるが、団体訪問組が約50%いるとは驚くばかりである。定例会議などの後、一人で残って部課長と話せば良いのにそれもやっていない。きっと彼ら彼女らは顧客が何を話すのか、顧客に何を尋ねられるかが分からないので、一人で訪問するのが怖いのだと思う。きっと恥をかきたくないのだろう。ある意味、逃げているとも言える。そして部下のSEは放っておかれている。日本のIT業界では、残念ながらこれがまかり通っているのだ。