今回は、Oracle Database 12cで強化された、情報ライフサイクル管理(ILM、Information Lifecycle Management)を実現する機能について解説する。

 企業情報システムでは、オンライン(通信回線を通じて即座に提供される状態)で保持されるデータの量と種類が急激に増加しつつある。また、企業経営をとりまく法制度の厳格化が進む中、これまでよりも長い期間、各種のデータを保持する必要が出てきた。その結果、多くの企業でストレージコストの増大やI/O性能の劣化といった問題が顕在化しており、対策すべき喫緊の課題として浮上してきている。

データベースにおけるILMを容易に

 Oracle DatabaseではILMを実現するために、以下の三つを目標として掲げ、機能の拡張・改善を加えてきた。(1)ストレージにかかるコストの削減、(2)I/O性能の維持と改善、(3)データの安全性の確保である。

 最新バージョンであるOracle Database 12cではそれらの目標を達成するべく、新たに 「ILMの自動化」 に着手した。ILMの自動化を可能にするために「Heat Map」 と 「Automatic Data Optimization」 という二つの新機能を備えている。それぞれがどのような機能なのかを見ていこう。

【Heat Map】

 「Heat Map」は12cで新たに追加された機能で、アクセスパターンのモニタリングを可能にするものである。

 データベースに格納されるデータのうち、特にトランザクションデータに関しては、時間の経過に伴ってアクセスパターンやアクセス頻度が顕著に変化していく(図1)。

図1●データのライフサイクルとアクセス頻度の関係を示した模式図
図1●データのライフサイクルとアクセス頻度の関係を示した模式図
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 例えば受注データの場合、データが発生した当初は在庫引当や発送情報の追加といった業務のために頻繁に更新される。発送作業や取引先からの入金が完了すると、売上履歴などのレポーティングのために検索されるだけとなる。その後は法制度への対応のために保存されてはいるものの、ほとんどアクセスされない状態へと移っていく。

 Heat Mapは、このように時間とともに変化するデータへのアクセスパターンやその頻度を把握する。具体的には、Oracle Databaseで管理するデータの単位、つまりブロックや表、パーティション、表領域の単位で、アクセスパターンと頻度が確認できる。