これまで組織が年月を経て規模の拡大とともに「劣化」していく様々な事象について述べてきました。今回は性悪説化と減点主義化です。

 組織は歴史とともに性善説から性悪説に移行し、それに伴って評価も減点主義化が進行していくことでルールが増えていきます。その結果、新しいことへの挑戦意欲が減り、活力が削がれていくことになります。

 この流れも基本的には一方通行で、逆の流れというのは自然に起こることはありません。

なぜ減点主義化が進むのか?

 会社は成長とともに顧客の期待値も変わってきます。スタートしたばかりのベンチャーであれば、“とがった”製品やサービスを求めてやってくる顧客が多いので、会社としても、他社に先駆けて新しいものを作ろうという気概があり、「“最高品質”をより上げる」ことにエネルギーが費やされます。一方、伝統的大企業に顧客が要求することはといえば「何かあったときに安心である」といったことであり、「“最低品質”がいかに高いか」がポイントになります。

 これらが両方満たせるやり方があればよいのですが、残念ながらこれらはどちらかに優先順位を置かざるえず、そうすると伝統的大企業では「最低品質を一定以上にキープする」ことに重点が置かれます。つまり、素晴らしいものが出てくるようにするというより、とんでもなくダメなものを排除するという方向にならざるを得ません。これが減点主義化が進むメカニズムです。

 加えて、ある程度の伝統や規模がある大企業というのは、社会的責任も大きくなっていきます。「社会的責任とは何か」と言えば、他社にないようなオリジナリティを発揮することではなく、不祥事やトラブルなどのネガティブな要素を少しでも少なくすることになります。ここでも減点主義が幅を効かせる要素が潜んでいます。