今週、米スプリント・ネクステルが臨時株主総会を開き、ソフトバンクの買収案を承認した。投票総数の約98%という圧倒的な支持だった。あとは米連邦通信委員会(FCC)の承認を残すのみで、買収はほぼ確実となった。順調に進めば7月上旬にも完了する見込みである。
並行して、スプリントによる米クリアワイヤの完全子会社化も大きく前進した。米衛星放送のディッシュ・ネットワークがクリアワイヤの25%以上の株式取得を狙って株式公開買い付け(TOB)を提案していたが、米国時間の6月26日に取り下げた。クリアワイヤ取締役会は既にスプリント提案を支持しており、こちらも7月8日の臨時株主投票を経て決定的となる見通しである。
過去最大規模の買収総額
ソフトバンクがスプリント買収を発表したのは約6カ月前の2012年10月15日。その直前の10月1日にイー・アクセスの買収を発表(その後、2013年1月に一部株式の売却で議決権ベースの出資比率を3分の1以下に変更)したばかりだっただけに驚きは大きかった。買収総額(当初)も約201億ドルと過去最大規模だったことから日本中に衝撃が走った。
10月15日の発表会に登場したソフトバンクの孫正義社長は、これまで買収した日本テレコム、ボーダフォン日本法人、ウィルコムの3社をV字回復させた実績を挙げ、スプリント買収にも自信だっぷりの表情。「これまではウィルコムやイー・アクセスの契約数を入れて国内2位か3位かと言っていたが、全部誤差だった。日本だけではなく世界で2位か3位かの話にステージを変えよう」と高らかに語った。
ただ、スプリントは赤字続き(2011年12月期まで5期連続、2012年12月期で6期連続)で苦しんでおり、世界中の大手通信事業者に買収が持ちかけられていたのが実情。NTTグループやKDDI(au)の幹部からはソフトバンクの高値掴みを心配する声まで聞かれた。それゆえに多少の波乱はあっても順調に進むと見られたが、やはり甘くはなかった。
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