2013年5月29日から31日までの3日間、国際技術カンファレンス「LinuxCon Japan 2013/CloudOpen Japan」が東京で開催された。Linuxカーネルの開発を支援しているThe Linux Foundationが主催する技術カンファレンスだ。
Linusが語ったカーネル開発の現状
今回のLinuxConでは2年ぶりにLinus Torvalds氏が来日。「Linux: Where Are We Going」と題して、Linus氏と、IntelのDirk Hohndel氏(Intel's Chief Linux and Open Source Technologist)によるトークセッションが行われた。
最初に「普段はどんな風に自己紹介していますか」と振られたLinus氏は「Linusです、としか言わないよ。それだけ。普段は、なるべく注目を集めないようにしてるから。Linuxのことを普段の生活には持ち込まないようにしてるんだ」と、いかにも彼らしい答え。
現在のカーネル開発の状況は。
ここ数年のLinuxカーネル開発のやり方は、かなり安定していると思う。新しいテクノロジが次々に入ってきているけど、8週間から10週間に1回という、定期的なリリースサイクルを維持できている。特定の新しい機能を次のリリースに、といったプランは持たずに、準備ができていれば含めるし、準備ができていなければ次のリリースに回す、というやり方でうまくいっている。
最近は変更量が増えてきて大変ではないですか。
変化のスピードが速くなっている、変更量が多くなっているというのは確かにある。前回のリリースが過去最大の変更、という最近の傾向は、もはや驚きじゃない。
ただ、なるべく10週間に1回というリリースサイクルはキープしたいので、準備ができていないコードがあるのは困る。マージするときに、きちんとテストされてないコードが入ってしまって、そのために後から苦労するのは嫌だからね。
なるべく早くアップストリームにマージしたいという気持ちは分かるけど、それによってこちらが苦労させられるのは勘弁してほしい。悪いけど、もっとクリーンアップしてから出してくれと言いたい。そういうのは、できるだけプライベートなメッセージで言うようにしてるけど、たまにパブリックな場で言ってしまうこともあるけど(笑)。
私の仕事は、様々な変更を統合することなので、できればデフォルトで“Yes”と言いたいとは思ってるよ。みんなが新しい機能を求めてることは分かっているし、リクエストしてきた方にしても、ずっと取り組んできた成果が受け入れられないというのは辛いよね。私にとっても“No”と言うのは辛いことなんだ。でも、しょうがないこともある。
Linuxは、どこに向かうのでしょう。
プランはないよ、最初から。でも何をしたいかは分かっていたし、やりたいことをやってきただけ。それはずっと変わらない。
オープンソースのいいところは、参加しているそれぞれが別々のプランを思い描いていること。ある人は小さいデバイスで動かしたいと思っているし、またある人は宇宙で使うために……などなど、いろいろな動機を持った人が集まってきているから楽しい。
だからLinuxは、どこに行くという決まったプランがあるのではなく、参加しているそれぞれの人がそれぞれ持っているプランが動機となって多様な方向に進化していくことになると思う。だから面白いんだ。