専門家に聞く
仕事の面白さを再認識した一冊
技術部門に新しく入ってきた人や周囲の技術者に必ず薦める本があります。それは、「インターネットのカタチ」(オーム社)です。
この本は「インターネットとは何か」について書かれている本です。技術の解説もありますが、プロトコルについて細かく書かれた技術書とは違います。ネットワークの専門的な知識がなくても読み進められますし、経験者は幅広い知識が得られます。読んだ人は、「面白かった」「視野が広がった」と感想を話してくれます。
私がこの本に出合ったのは入社10年目の頃でした。たいていのネットワーク技術書は、読んでいるといろいろ疑問が湧いてくるものですが、この本は違いました。「何でこうなのだろう?」という疑問に答えてくれたのです。自分がやっているプロバイダーのネットワーク設計という仕事が改めて面白いと思いましたし、頑張ろうという気持ちにもなりました。
幅広く書いてあるので、自分の専門じゃないけど役立つ話がいろいろありました。例えば第5章には、海底ケーブルが切れる理由や復旧の方法などが書かれています。私は通信事業者から海底ケーブルを借りる立場なので、断線したときの復旧見込みなどがわかるようになって役立ちました。
実は、私が一番この本を読んでもらいたいと思うのは経営者なんです。IT系の会社の経営陣は、細かい技術本を読んでいる暇はないでしょうが、インターネットでどんなことが起こっているか気になっているはずです。そうしたインターネットの動向を、本書はうまく1冊でまとめてくれています。
レベルの差を感じて猛勉強を開始
私のスキルアップの転換点は、入社して7年目くらいの頃でした。海外の一流のエンジニアと話す機会があり、自分の実力が足りないことを思い知りました。
まず暗記量が違う。それまでは、細かいところはその都度調べればいいやと思っていたんです。でも基本のところは丸暗記するくらい覚えておかないと、国際会議で議論するときでも、提案に対してすぐに反論できません。
そこで基礎からやり直しました。技術書を読み、自宅に実験環境を作って自分で動かしてみました。さらに英語で書かれた原文にも当たりました。今では、国際会議に出ても議論で戦えるようになっています。最近は年間目標を10個ほど立てて、関連する資格試験を受けたりして目標達成の進捗をチェックしています。
インターネットのカタチ
あきみち/空閑 洋平著
オーム社
1995円(税込)
- インターネットのカタチ (日経NETWORK,2011年8月号)