東京海上日動火災保険の宇野直樹常務とITリサーチ大手、ガートナー ジャパンの日高信彦社長が保険ビジネスのイノベーションについて語り合った。

 宇野常務によると東京海上日動は「新しいものが好きで、何かにこだわるところが昔からある」。IT(情報技術)を使ってビジネスプロセスを進化させる一方、コンサルティング型の提案に取り組んでいく。

 「人間はリスクを感知し続ける。世の中が高度になればなるほど新しいリスクが生まれるから、リスクに対するコンサルティングニーズは不変」という。

(構成は谷島宣之=日経BPビジョナリー経営研究所研究員、中村建助=ITpro編集長)

日高:御社は1日単位で加入できる「ドコモワンタイム保険」、生命保険と損害保険を融合した「超保険」、といった新しい保険商品を積極的に発売しています。保険というビジネスは今後どうなっていくとお考えですか。

宇野 直樹氏
宇野 直樹氏
東京海上日動火災保険 常務取締役
1977年東京海上火災保険入社、2008年東京海上日動火災保険 執行役員事務会計サービス業務部長、常務取締役ビジネスプロセス改革部長、東京海上ホールディングス常務執行役員等を経て2011年8月より現職。2013年6月下旬 東京海上日動システムズ社長就任予定
(写真:的野弘路、以下同)

宇野:ドコモワンタイム保険は携帯電話やスマートフォンのGPS(全地球測位システム)機能も使い、例えばゴルフ場に近づいていくと「ゴルフ保険はどうですか」とか、空港に近づくと「海外旅行傷害保険はどうですか」といったオファーが出る仕組みを備えています。

 保険商品そのものを変えるのではなく、商品をお勧めするところにGPS機能を入れて利便性を高めた。つまり、提案方法を変えたのです。NTTドコモさんがGPSの仕組みを既に持っていて、そこに我々の保険を連動させてもらった。こういうコラボレーションを考えていくことも今後の1つの方向だと思います。

日高:ワンタイム保険を出すにあたって、どういう経営判断があったのでしょうか。

宇野:弊社は新しいものが好きで、何かにこだわるところが昔からあります。ワンタイム保険もそうです。若者のニーズを満たすことができないか、という発想でした。例えば大学生が夏休みに実家へ帰って両親の車を乗りたいと言ったとき、この保険が使えます。

日高:従来の保険ですと年齢条件や補償範囲の制限があるわけですね。

宇野:ご両親が夫婦限定補償の保険に入られていたら、大学生のお子さんが1日だけ運転しようとしても条件変更の手配は面倒。その問題を解消しようということで始めました。実績も伴っていて、春休み、夏休み、冬休みにすごい勢いで契約が伸びる。大抵20代の方です。やはり、何かにこだわりを持って、きちんとした商品を提供すればお客様は反応してくださるということではないでしょうか。