2011年6月23日に提供を開始した、スマートフォン向けのコミュニケ―ションサービス「LINE」は爆発的なスピードで利用者を増やし続けている。2年後の2013年5月末に、登録ユーザー数は1億6000万人に達した。このうち4500万人が国内のユーザーである。
LINEの事業責任者として、国内外での展開戦略を指揮しているのが舛田 淳氏だ。もともとプランナーやプロデューサーなどの仕事に携わっており、LINEについてはサービスの企画段階から関わっている。
企画段階で舛田氏が重視していたキーワードは「スマートフォン・ネイティブ」だった。スマートフォンでもコミュニケーション系サービスの需要が高まるとの分析を前提に、スマートフォンならではのサービスを追求してLINEを設計した。
その当時、スマートフォンで利用できる無料通話サービスやソーシャルネットワーキングサービス(SNS)は既に沢山あったが、それらのほとんどは、パソコンでの利用を前提に設計されたサービスであり、スマートフォン向きでない部分もある。
舛田氏はこれらを「パソコン時代の遺物」と評する。例えばSkypeには「離席中」など利用者のステータスを表示する機能されるが、LINEにはない。
LINEはSNSとしても使えるが、そのコンセプトを「クローズドでプライベートなSNS」とした。数多くのユーザーを擁している「mixi」や「Facebook」を「オープンでパブリック」なSNSとし、その対極を目指そうとした。
そもそも携帯電話は実社会で知人とつながるためのツールであり、スマートフォンも基本は同じ。その延長であれば、インターネット上であっても、クローズドでプライベートな交流こそが重要という割り切りだ。
いずれも、「スマートフォン・ネイティブ」を突き詰めることで到達した結論である。それがLINEの根幹になった。
冒頭で紹介した通り、LINEは国外で大きく伸びており、登録ユーザー数の約7割が国外であり、アプリは12カ国語に対応している。App Storeの無料アプリ配信ランキングでは、これまでに41の国と地域でトップになった。
グローバルにアプリを配信し、ユーザー数が増加傾向にある国や地域に、集中的にイベントやキャンペーンを仕掛け、LINEの世界展開を加速させていく。
今、LINEが目指しているのは、「WindowsやGoogle、iPhone、Facebookに比肩するような“世界の共通文化”になること」と舛田氏は語る。
国内外で伸びている今の勢いを持続させ、世界にLINEを広げていけるだろうか。
プラットフォームとしてのLINEは世界共通としても、その上で展開するコンテンツは地域ごとの文化に対応させる必要がある。
「SNSを超えて、どれだけ日常生活に入っていけるかがカギでしょう」。舛田氏は慎重に次の一手を探る。
日経パソコン編集