「iPadは見るために使うもの。でもそれだけでは人間がダメになる。何かを作るために使うものだって必要でしょう」。
ユビキタスエンターテインメント代表取締役社長兼CEOの清水亮氏は声に力を込めた。
歴史を振り返ると、人間は印刷物を読むだけでなく、白紙のノートを使って何かを生み出し、文明を発展させてきた。白紙のノートのようなタブレットを用意すれば、人間の創造性をもっと高められる――。
そんな信念を貫き、手書き入力を重視した新しい発想のタブレット「enchantMOON」を完成させた。
製紙会社で働く父親の影響で、幼少の頃から大量の紙が自由に使える環境に身を置いてきた。今でもプロジェクトの構想をまとめる際など、紙を手放さない。会議室の机には大きな模造紙の束が置いてある。
紙に愛着があるからこそ、使い勝手と書き味にはこだわった。本体に電源を入れると即座にメモの入力画面が現れる。電磁誘導式のペンを採用して追従性を高めた。
本体を設計する上では、「書くことに集中できるように余計な機能やボタンを省いた。機能をプラスするよりマイナスの発想を追求した」という。 紙のメモ帳を超えるIT機器としての利便性も付加した。手書きした文字の自動認識・検索の機能を備えているほか、内蔵カメラで撮影した画像をメモに添付できる。入力した文字や図を選択して別のメモやWebページなどへのリンクを設定する機能もある。
さらに、手書き入力したメモに対する処理を利用者が定義できる。ブロックのような部品を組み合わせるだけで、簡単にプログラミングができるようにした。例えば、メモの中に書いてあるマークをタッチすると、メモをオンラインストレージに記録するといった処理を記述できる。
ペンで書く、ハイパーリンクを貼るといったタブレット操作の延長線上でブロック操作のプログラミングができるようにしたわけだ。
「だれでもプログラミングができるようにしたい。でも一般のパソコンユーザーがプログラミング言語を使って機能を定義できるようになるまでには大きなハードルがあった。その学習ギャップを埋めたかった」