前回まで「チームワーク」による部分最適「報告のための報告」といった組織の問題について述べてきましたが、これらに共通する原因が「手段の目的化」です。

 会議、予算、組織、情報システム、役職など、本来は何かの目的のためにできたものがいつの間にか一人歩きし、それ自体が自己目的化していくということが、全ての組織で起こっています。これは集団の思考停止の典型的症状と言え、組織の活力がなくなっていく大きな要因と言えます。

「昨年の予算ありき」から始まる予算計画

 大組織には「手段の目的化」現象があとを断ちません。具体的な例を見ていきましょう。

 例えば「予算」です。そもそも会社で何かをやろうとすれば、必ず「ヒト・モノ・カネ」が必要になってきます。そのために計画されるのが予算です。

 最初は特定の目的のために計画され、承認されてようやく獲得にこぎつけた予算であったとしても、二巡目以降に問題が発生します。大抵の組織では予算計画というのは「前年並み」をベースに考えられますから、まずは「昨年の予算ありき」から話が始まります。それが何年も続けば「この『○○費』ってなんだっけ?・・・でも何かに使えそうだから使い道を考えよう」という、まったくの「本末転倒」が起こります。

 つまり、予算を使うのは「そこに予算があるから」ということが起こってくるのです。これが手段の目的化です。