第1話~4話まで、我が国の携帯電話の電波がいかに「見えない」状況にあるかを解説してきた。ではこの状況を今後いかに解消し、電波を「見える化」していけばよいのか。

欧米で始まった実測の試み

 我が国の電波の見えない状況について、3月末に筆者が総務省ワーキンググループでプレゼンをする準備を始めるまで、恥ずかしながら海外の状況に関する情報を全く持ち合わせていなかった。しかし調べてみると、欧米諸国では既に計測の枠組みが確立していることが分かった。

 北米では固定ブロードバンドの品質について、3年前からFCC(連邦通信委員会)自身が調査を行っている。「Measuring Broadband America」(以下、MBA)という取り組みで、毎年9月に調査し、翌年2月に公表している(図1)。2010年の第1回の調査では、広告表示の最高速度と実測値との乖離が大きかったが、最新の調査(2013年2月公表)では、その乖離が縮小しており、FCCは各キャリアが広告に表示した値と実測値の乖離の是正に努めていることを評価している(FCCの発表資料)。

図1●FCCの「Measuring Broadband America」 http://www.fcc.gov/measuring-broadband-america

 このMBAの携帯電話版である「Mobile Measuring Broadband America」は現在進行中である。スマホ向けの計測用のアプリケーションがFCCのホームページからダウンロードできるようになっており、今後、計測結果が発表されるだろう。

 欧州に目を向けると、英国でも北米と同様に、固定ブロードバンドの品質調査が進んでおり、広告慣行委員会(Committee of Advertising Practice;CAP)によって、広告スピード表示のガイダンスが策定されている。2012年11月には、固定に続きモバイルブロードバンドの広告スピード表示が、表示ガイダンスの対象となった。

 同ガイダンスによるスピード表示原則では、サービスプロバイダは固定・モバイルにかかわらず、少なくとも利用者の10%が実際に利用できるブロードバンドスピードを、「最大」という文言を付けて表示しなくてはならない。また同ガイダンスは主に下りスピードの表示について説明しているが、上りスピードも同様に取り扱われる必要があるとしている。(CAPの発表資料