キャリアのネットワーク力競争において、「人口カバー率」、「データ通信速度」と併せて、「基地局数」が指標としてよく用いられている。この基地局数というものも、人口カバー率、データ通信速度と同様、実にわかりづらい。

基地局が多ければ通信品質は良いのか?

 一例として、ソフトバンクモバイルの孫正義社長がプレゼンで利用した資料をとりあげる。スマートフォン時代の「パケ詰まり」を回避するうえで、有効な手段が「小セル化」だと孫社長は主張した(図1)。この主張は理論的には正しい。同じ面積のエリアを、1つの基地局(セル)でカバーするのに対して、複数のセルでカバーした方が、スループットは上がる。

図1●「小セル化でトラフィックを分散」 出所)2013年3月21日、ソフトバンク孫正義社長プレゼンテーション資料 http://www.softbankmobile.co.jp/ja/design_set/data/news/conference/pdf/material/20130321_01.pdf

 KDDIのIR資料においても、LTEでピコセル(小型基地局)を活用することで、ユーザーの体感速度を向上させるという(図2)。誰もが高速・広帯域でデータ通信をするスマホ時代は、小セル化の時代といえよう。

図2●「4G LTEピコセル基地局を世界初導入」 出所)2012年12月24日、KDDI2013年3月期第2四半期決算説明の田中孝司社長プレゼンテーション資料 http://www.kddi.com/corporate/ir/library/presentation/2013/pdf/kddi_121024_main.pdf

 とはいうものの、単純に基地局の数が多ければ良いのだろうか?キャリアは、自社の基地局数がNo.1だと主張し(図3)、前倒しで基地局数を増加させると訴える(図4)。消費者はそれを信じるしかないが、基地局は「量」だけでなく、その「質」も問われる。

図3●「スマホ時代のネットワークNo.1へ」出所)2013年3月21日ソフトバンク孫正義社長プレゼンテーション資料 http://www.softbankmobile.co.jp/ja/design_set/data/news/conference/pdf/material/20130321_01.pdf