特集の第2回では、「つながりやすさ」のポイントとしてトラフィック対策が重要になっている背景を説明し、主に4つある手段の中から(1)LTEへの移行促進、(2)複数周波数帯による分散---について解説した。

 今回は残りの(3)スモールセルと(4)無線LANオフロードについて見ていこう。

やればやるほど効果が出るスモールセル

 まずはスモールセルについて。スモールセルとは、基地局がカバーするエリアを小さくし、基地局に収容するユーザー数を少なくすることで容量拡大を図る手段である。エリアを3分の1に分割すれば収容能力は約3倍、10分の1に分割すれば約10倍と、セルを小さくすればするほど効果は高まる。

 第2回で解説したLTEへの移行促進や複数周波数帯による分散は、各事業者の周波数帯の保有状況によって取れる手段や効果は限られてくる。それに対してスモールセルは、バックホール回線や用地の確保という面を除けば、原則として事業者の努力によっていくらでも取り組みを進められる。つまり先に挙げた4つのトラフィック対策の中でも、スモールセルは特に効果が高い取り組みになるのだ。

 実際、スモールセルはトラフィック対策の主役に浮上しつつある。例えばソフトバンクの孫正義社長は、2013年3月に開催した同社のネットワークの取り組みの会見にて、スモールセルの重要性を特に強調した(写真1)。孫社長は各社の契約数当たりの基地局数を割り算することで「1つの基地局に収容する人数はドコモは600人、KDDIは300人、ソフトバンクは150人」と説明。同社は基地局数当たりのユーザー数が少ないため、スモールセルの容量改善効果を発揮できているとした(写真2)。

写真1●スモールセル(小セル化)のメリット<br>ソフトバンクが2013年3月に開催した説明会から。基地局当たりの収容ユーザー数を減らすことで容量改善を図る。
写真1●スモールセル(小セル化)のメリット
ソフトバンクが2013年3月に開催した説明会から。基地局当たりの収容ユーザー数を減らすことで容量改善を図る。
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写真2●孫社長が強調した基地局当たりのユーザー数の比較<br>これは少々乱暴な比較と言える。
写真2●孫社長が強調した基地局当たりのユーザー数の比較
これは少々乱暴な比較と言える。
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 もっとも孫氏の説明は、スモールセルの重要性を訴えることは間違っていないが、他社との比較は少々乱暴だ。スモールセルは、容量がひっ迫している地域に重点的に投入することこそ意味がある。単純に全基地局数で割り算するだけでは、本当に効果的な取り組みになっているのかどうか分からないからだ。

 また単純に各サイトごとの基地局数を分母とするのも正しくない。スモールセルと同様の効果がある取り組みとして、1つの基地局上でセルを分割するセルスプリットがある。NTTドコモは、セルスプリットを進め、一部ではセルを6分割する6セクター基地局を運用している(6セクター基地局について解説しているドコモのwebページ)。例えばドコモによると、東京23区内の約20%の基地局が6セクター基地局になっているという。つまりこれらの基地局では6倍の収容能力になっているわけだ。こうした要素も考慮しなければ、フェアな比較にはならない。