第1回では、端末自体の魅力に変わって、ネットワークの「つながりやすさ」が、携帯各社の差別化ポイントとして急浮上している様子を紹介した。

 ではその「つながりやすさ」とは、どんな取り組みによってもたらされるのか。その前に、単に「つながりやすさ」といっても、そこには大きく分けて、エリアカバーとトラフィック対策の2つの側面がある点を解説しよう。

スマホ以降に表面化した「トラフィック対策」

 まずエリアカバーは、該当するエリアが面的にカバーされ、電波がちゃんと端末に到達しているかどうかという取り組みになる。スマホ以前のモバイルの競争軸は、ほぼこの要素しかなかった。

 国内携帯各社がすべてLTEサービスを開始したことによって、再びLTEサービスのエリアカバーが1つの競争軸になっている。ただ指標となる人口カバー率については、現在は携帯各社でまちまちの状態で、単純比較は難しい。この問題については特集の第4回で詳しく述べる。

 もう一方のトラフィック対策は、スマホ以降に表面化した新たな競争軸だ。都心部など人が集中し、面でそのエリアがカバーされていたとしても、つながりにくいケースがある。無線通信の特性から、複数ユーザーで帯域をシェアするためだ。このような状況では容量を増やす工夫が必要になってくる。

 ユーザーがひしめき合い、帯域がひっ迫した状態でピーク速度をうたっても、到底そのようなパフォーマンスは出ない。1年で2倍近くトラフィックが増えている現状では、このような危機が都心部を中心に目前に迫っている。今後、より重要になってくる「つながりやすさ」とは、こちらのトラフィック対策になるだろう。

 そんなトラフィック対策のための主な手段としては、(1)LTEへの移行促進、(2)複数周波数帯による分散、(3)スモールセル、(4)無線LANオフロードの推進---が挙げられる(図1)。切り札は無く、適材適所でこれらの取り組みを総合的に行っていく必要がある。こうなると、これまで見られたような、単に基地局の数を競い合うような競争は、もはや意味をなさなくなる。

図1●トラフィック対策の主な手段
図1●トラフィック対策の主な手段
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 しかも日々変化し続けるネットワークをモニターし、容量があふれそうなエリアに対していち早く手当をしていかなければ、「つながりやすさ」を維持できない。絶え間ない努力が求められる根気のいる競争になっている。