SAPジャパンがクラウド事業に本腰を入れる。中核となるのは8月に提供を始める20種類以上のSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)だ()。安斎富太郎社長は「クラウド事業だけを見ると当社は後発だが、企業システムには一日の長があり、成功の余地は十分にある」と自信を見せる。

図●SAPジャパンが提供する主なクラウドサービスと関連製品
図●SAPジャパンが提供する主なクラウドサービスと関連製品
[画像のクリックで拡大表示]

 今回提供するSaaSの目玉の一つは、中堅企業向けERP(統合基幹業務システム)「SAP Business ByDesign」。2007年に発表したものの日本では提供していなかった。加えて、(1)People、(2)Customer、(3)Money、(4)Supplierの4領域でSaaSを提供する。クラウドファースト事業本部の馬場渉本部長は、「ERPなどの既存製品を補完したり、企業内でIT化していない業務を支援したりする役割が中心になる」と話す。

 (1)はタレントマネジメント、社員の学習支援、採用支援などのSaaSで、SAPが買収した米サクセスファクターズのサービスが中心となる。(2)は保守担当者の業務支援やソーシャル分析、リアルタイムの販促支援、(3)は中小企業向け会計、販売実績と需要予測を結びつけるS&OP(セールス・アンド・オペレーション・プランニング)といったSaaSの提供を予定している。(4)は調達、購買支援などのSaaSで、買収した米アリバのサービスが中心となる。

 SaaSを提供するデータセンターは米国とドイツにあり、年内にシンガポールに新設する予定だ。日本ではSAPジャパンが直販するほか、パートナー経由でもSaaSを販売する。

 SAPジャパンはSaaSと同時に、PaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)構築ソフト「SAPHANA Enterprise Cloud(HEC)」も投入する。HECは同社製インメモリーデータベースの「HANA」を利用できるPaaSの構築・実行環境で、データセンター事業者に売り込む。

 HECで構築したPaaS実行環境では、HANAに対応したSAPERPといった同社製品を利用できる。「基幹系のインフラをオンプレミスからPaaSに移行して削減できた運用費を、SaaSなど新領域への投資に振り向けてもらう」(馬場本部長)狙いもある。

 同社はSaaSやPaaSを拡販するためにクラウドファースト事業本部を4月1日に新設。現状は約60人が所属する。自社のクラウドサービスに加え、パートナーが提供するSAP関連のクラウドサービスを販売していく。