写真●NTTブロードバンドプラットフォームの小林忠男社長
写真●NTTブロードバンドプラットフォームの小林忠男社長
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 「PHS事業を手がけていた頃から、端末のアクセス技術は最後には無線になると確信していた」――

 NTTグループの公衆無線LANサービス用のネットワークを構築・運用するNTTブロードバンドプラットフォーム(NTTBP)の小林忠男社長は、今年で11年目を迎える公衆無線LAN事業の道のりをこう振り返る。

 公衆無線LANサービスは、今でこそスマートフォンのトラフィックを移動通信網からオフロードさせる手段として、また安価に使えるワイヤレスブロードバンド手段として様々な場所で使えるようになった。NTTBPが設置するアクセスポイント数も1年前の1万局から2013年3月末時点で12万局と急ピッチで増えている。

 だが、設立当初はユーザーが増えず、なかなか黒字化できずに苦労したという。同社の設立は、購入時点で無線LANアダプタが搭載されているノートパソコン向けに「Centrino」というブランドをインテルが使い始めた時期だった。当時、屋外でも無線LANで通信したいというニーズが立ち上がるのを見込んで、各社が公衆無線LANサービスに参入した。

スマートフォンが一気に活用シーンを拡大

 当時は、無線LANを使えるエリアがまばらだったことや、月額500円程度の料金負担が必要だったことなどから、外出時に仕事で高速な通信環境が必要なビジネスユーザーなどのほかに利用が広がらなかった。それが端末の進化に伴って需要が変化した。

 「ノートパソコンに続いてニンテンドーDSなどゲーム機にも無線LAN通信機能が搭載され、対象が一気に広がった。その次にiPodが登場した時に、これはすごいことになるぞ、と思った」

 その後、iPhoneやAndoroidも含むスマートフォンが一気に『携帯するコンピューター』のメインストリームになった。こうして、3GやLTEだけではさばききれないトラフィックを肩代わりするインフラとして、急速にエリアの整備が進んだ。

 「端末の進化のタイミングに恵まれて、ここまでやってこられた」と小林社長は言うが、90年代後半から2000年代にかけて携わったPHS事業を通じてこうした流れを予見していた。

 「PHSは64kbps程度の速度しかなく、エリアもすき間なく埋められなかったことで、なかなか良さを理解してもらえなかった。それでNTTグループとしては途中であきらめてしまったが、無線通信の高速化や映像などを扱う端末の高性能化は、チップの低価格化、集積化で、あっという間に比べものにならなくなると思っていた。高速化すれば無線の特性上、エリアは狭くなる。したがって、スポット的な高速通信サービスが必要。こういう思いがあったが、公衆無線LANで証明できた」