高度な分析手法を駆使し、大量のデータから隠れた真実を鮮やかにすくい上げる――。
「21世紀の最もセクシーな職業」とも言われるデータアナリスト。リクルートテクノロジーズのシニアアナリスト、西郷彰氏はまさにこのイメージを体現する人物だ。メーカーの商品開発を皮切りにデータ分析の専門家としてのキャリアを積んできた。
2012年10月にホールディングス制に移行したリクルートは、人材、住宅、結婚など様々な情報市場でネット事業を積極的に推進し、大規模データを分散処理するHadoopなどの先端技術を駆使した巨大サイトを運営する。広告主である企業と、サイトを利用するユーザー双方の膨大な情報が集まる。まさにデータサイエンティストが本領を発揮できる職場だ。
地頭のいい営業軍団にデータの価値伝える
とはいえ、西郷氏は「高度な分析をするのが目標ではない」とさらりと話す。
「やりたいのは事業への橋渡し。『データを使えばこんなことができる』と事業部門のMP(メディア・プロデュース)責任者に伝え、『面白いじゃん、すげえな』と言わせたい」
リクルートと聞けば、いわゆる体育会系のパワフルな営業部隊のイメージが浮かぶが、西郷氏は次のように語る。
「データ活用が成果を生むと分れば、どんどん使おうとする柔軟性がある。データ分析の専門チームがサポートすることで、データも人材も、もっともっと生きる。そこに可能性を感じる」
西郷氏をはじめ、データサイエンティストたちはグループ内の様々な事業会社のMP(メディア・プロデュース)の責任者とプロジェクトを組み、サイトの機能強化や集客手法の進化に工夫を凝らす。
時には「何が事業課題か」という命題にさかのぼって議論することもある。「ハウ」だけでなく、「ホワット」にも踏み込むわけだ。
「事業を一番よく知る責任者でも、どこから手をつけていいか分からないことがある。ちょっとした分析をその場でやることで方向性が見え、課題が絞り込めてくる」
西郷氏の言葉はビッグデータ時代の戦略策定のプロセスや、データサイエンティストの価値を的確に表現している。
スモールスタートでまず成果を出す。数字で成果を示せば、その価値はあっと言う間に広がる。かつて情報誌市場を作り上げたリクルートが、ネットでもトップランナーになった背景には、成果にどん欲で柔軟な思考を持つ社員たちと、データサイエンティストの二人三脚がある。
日経情報ストラテジー