「プレゼンテーションとデモンストレーションは、クールにセクシーに」
西脇資哲氏のこの言葉を聞いた人は少なくないだろう。同氏は技術セミナーなどで日本マイクロソフトの製品やサービスに関する数々のプレゼンとデモをこなす「エバンジェリスト」。紹介する製品・サービスを聴衆に「クール(かっこいい)」で「セクシー(美しい)」と思ってもらうことをゴールに、日々デモとプレゼンにいそしむ。
西脇氏はエバンジェリストという役割を日本で確立した立役者といっても過言ではない。「カリスマエバンジェリスト」と呼ばれることもある。日本マイクロソフトの社員であるため、同社の製品やサービスを紹介する仕事が基本だが、開発者のコミュニティや人材教育の現場などにも活動範囲を広げている。
同氏は最先端の製品・サービスを「クールにセクシーに」説明したいと考える。「デジタルで複雑な製品・サービスだからこそ、人間らしいプレゼンやデモが必要」で分かりやすく説明するだけでは不十分という。聞き手の理解を進めるだけでなく、親しみを持ってもらうようにすることまでを目標にしているからにほかならない。
無味乾燥になりがちなエンタープライズ向けの製品・サービスをプレゼンしたりデモする場合でも、クールにセクシーにすることを心掛ける。
「エンタープライズ向け製品・サービスのプレゼンでも、お客様が見入るような映像や図、写真を使うように工夫する。例えば、お客様自身が画面に映るデモを組み込むと、お客様が映像に見入るようになる」
エンジニアこそクールにセクシーにプレゼン
西脇氏がエバンジェリストになった根底には「『自分は開発者』という意識がある」という。同氏は就職してまずシステム開発者になった。
「コテコテでディープな開発者だったが、自分が作ったもの、生み出したもの、自分が発見したものについてはとにかく人に伝えたいし、自慢したいと思ってきた。実際に開発した製品について自分でセールスを行ったり、カタログを作ったりした」
その後、転じた日本オラクルで1996年から約13年間、マーケティングに従事。顧客に製品・サービスの情報を伝える技術を深めていく。当時、日本オラクルにエバンジェリストという役職はなかったが、製品・サービスを徹底的に調べて、それを基にクールにセクシーにプレゼンとデモを行うスタイルを確立した。
そして2009年、正式にエバンジェリストを職位として設置していた日本マイクロソフト(当時、マイクロソフト)に入社して現在に至る。
西脇氏は、エンジニアこそクールにセクシーにプレゼンとデモを行うべきだという。
「この製品・サービスは、こんなに難しい技術を利用しているが、すごくかっこよくてすてきだ、と説明する。その役割を製品やサービスを一番よく知っているエンジニアが担ってほしいし、そのスキルを持っていてほしい」
「骨の髄まで最先端の製品・技術を研究しているエンジニアこそ、お客様の心をつかめる。エバンジェリストになると、製品・サービスを開発しなくなるかもしれないが、だれにも負けないほど、製品・サービスを研究して知り尽くすことは続けられるし、それが大前提だと思う」
今後は、クールにセクシーにプレゼンとデモを行う技術を幅広く広めることにも力を注いでいきたいという。既に製品やサービスのデモやプレゼンを行うエグゼクティブやエンジニアに向けて指導することもしている。
「あらゆるエグゼクティブやエンジニアの方が自社あるいは自分の製品・サービスを良い意味で“自慢”できるようにご支援してきたい」
日経BPイノベーションICT研究所