前回は組織の肥大化、複雑化によるコミュニケーションコストの加速度的増大について述べましたが、今回はその一つの典型例としての情報共有やいわゆる「ほうれんそう」(報告、連絡、相談)の功罪についてお話ししたいと思います。

その「情報共有」は本当に必要か?

 組織が大きく複雑になればなるほど、社内での情報共有の重要性は高まっていきます。大きな会社になればなるほどこの傾向は強く、新入社員が入社直後に徹底して指導されることの一つが「ほうれんそう」です。「ほうれんそう」上手はたいてい上司の受けもよく、会社の中でうまく立ち回って仕事をスムーズにまわしていきます。これはすなわち社内の情報共有の重要性を物語っています。

 普段なにげなく使っている「情報共有」という言葉ですが、ここで改めてそもそも何のためにやっているのかを考えてみましょう。大きな会社になればなるほど、人も増え、部門も増えますから隣の人(部門)が何をしているのかはよほど注意をして情報収集していないと分からなくなっていきます。

 このために同じことを社内で繰り返す無駄をなくすとか、成功事例を「横展開」するといったことが情報共有の主な目的といってよいでしょう。これ自体は非常に健全な考え方ですが、次第にこの情報共有もやること自体が目的になっていきます。