職場環境がしっかり整備されていないことも内部不正の温床となります。公平な人事評価や良好なコミュニケーション、不正行為を隠蔽しづらくする適切な配置転換が、組織の内部不正を防ぐための対策となっています。情報システムで大きな権限を持つシステム管理者には、十分な教育や適正な権限分散が求められます。


 従業員が意図して不正行為を犯そうと思ったのなら、不正行為は難しいことではありません。従業員は情報や情報システムにアクセスする正規の権限を持っているからです。この特徴が内部不正対策の難しさとなります。

 そこで従業員が不正行為を犯そうと思わないようにするための対策として、職場環境の整備に着目しましょう。職場環境は、IPAが実施した有識者へのインタビュー調査とアンケート調査の結果から得られた知見に基づいて述べます。

 まず、以下の4つの観点から、一般の従業員について有用な職場環境の対策を紹介します。

  • 公平な人事評価
  • 適正な労働環境
  • 良好なコミュニケーション
  • 適切な配置転換

(公平な人事評価)

 公平に人事評価されていないと感じると、従業員は不平不満を持ち、不正行為を犯す可能性が高まります。例えば、社内での処遇に不満があると、インターネットの掲示板に社内情報とともに不平不満を書き込んでいるケースが見られます。その結果、企業は社会的な信用を落としてしまう恐れがあります。

 競合他社にビジネス上の戦略を知られることで機会損失を受ける可能性もあります。顧客情報を書き込まれた場合には、その顧客にまで影響があるでしょう。ほかにも、不平不満が高まれば転職に至り、第3回で紹介したような重要情報の持ち出しにつながります。

 組織は昇進・昇格や給与体系について、公平で客観的な評価制度を整備する必要があります。そして、評価制度の運用において、上司が部下に人事評価結果をきちんと説明して、部下に納得感を持たせることが望まれます。