写真1●サイアメント代表取締役社長、医師 瀬尾拡史 氏(撮影:稲垣 純也)
写真1●サイアメント代表取締役社長、医師 瀬尾拡史 氏
(撮影:稲垣 純也)
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 澄み渡った水の中。螺旋状のリボンが優雅に舞い、宝石のようにきらめく物体がゆらゆらと漂う――。

 美しく幻想的な3次元CG映像のタイトルは“細胞の世界”。リボンに見えるのはDNA、宝石の正体はミトコンドリアだ。「正しく、楽しくサイエンスを伝えたい」という瀬尾拡史氏の思いが凝縮された作品の一つだ。

 瀬尾氏が3次元のCG制作に出会ったのは、中学校時代のパソコン部に在籍していたときだ。「数学と物理の固まりで苦戦した」が、真正面から取り組んで原理を理解した。

 ほどなくNHKのドキュメンタリー番組「驚異の小宇宙・人体」に魅せられ、生命科学分野のCG制作に興味を抱く。国内には、その道の専門家は見当たらなかった。「だったら自分がやろう」と心に決めた。

 「学術系のCGを作るなら、その分野の知識がないとダメ」。そう考えて、東京大学医学部に進学した。医師としての専門知識を身に付けるかたわら、専門学校に通ってCG制作の腕を磨いた。

 そして、サイエンスCGの制作を請け負うサイアメントを設立する。現在、社長として忙しい日々を送っている。

写真2●中学2年生のときに制作した初めてのCG。地面にできる影(シャドウ)と物体自身に落ちる影(シェイド)を施し、球体を表現した
写真2●中学2年生のときに制作した初めてのCG。地面にできる影(シャドウ)と物体自身に落ちる影(シェイド)を施し、球体を表現した
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写真3●細胞を表現したCG作品。正確さを保ちつつ、分かりやすく見栄え良く表現するために、形状や色、動きを細かく検討する
写真3●細胞を表現したCG作品。正確さを保ちつつ、分かりやすく見栄え良く表現するために、形状や色、動きを細かく検討する
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 サイエンスCGは「楽しく」サイエンスを伝えることができる。CGで視覚的に分かりやすく表現することで、一般の人に科学技術の意義を無理なく伝え、興味を喚起できる。

 例えばiPS細胞のように、優れた日本の研究成果を広く世界にアピールするのに使える。課題として叫ばれて久しい、“子どもの理科離れ”に歯止めをかけられる可能性もある。