福岡・博多で開催中の「Cloud Days 九州 2013/ビックデータ EXPO 九州 2013」で2013年6月19日、西鉄情報システムのソリューション本部 部長を務める浦正勝氏が基調講演に登壇。「交通ビッグデータの次世代戦略、データ銀行で新たな価値を生み出す」と題して講演した。

 西鉄情報システムは西日本鉄道の子会社でシステム開発やコンサルを手がけるSIer。浦氏は同社がメイテツコム、IIC、名古屋大学、九州大学と共同で進めているビックデータを活用した次世代都市交通情報共通基盤プロジェクトについて話をした。

 同プロジェクトは、“銀行”の概念でGPS、自動車制御(CAN)、電車やバスの運行情報、スマートフォンの位置情報、交通系ICカードなどからデータを収集(預け入れ)し、付加価値の形で利子を払い戻すというイメージだ。同プロジェクトは新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトとして選ばれており、浦氏はプロジェクトリーダーを務める。

西鉄情報システム ソリューション本部 部長 浦正勝氏
西鉄情報システム ソリューション本部 部長 浦正勝氏
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 移動体データ銀行を活用するプロジェクトの一つが「のりものインフォコム」だ。浦氏らの西鉄情報システムが担当しており、マルチモーダル乗換案内、他言語による情報提供、路線バスの満席・空席情報検出の三つのアプリケーションの開発を予定している。

 複数の交通機関が連携することで実現するマルチモダール乗換案内では、ダイヤ通りに進まないバスなどの運行状況や天候情報などを組み合わせ、利用者の目的に合わせた到着予測、乗換案内などのリアルタイムデータの提供を目指す。蓄積されたデータをベースに、新たなプローブ事業がうまれる可能性もあるとみる。浦氏らは移動体データ銀行プロジェクトなどにより交通情報データの活用が進めば、現在267億円と言われる交通情報市場を10年後には5倍強の1500億円市場に拡大できると期待しているという。

「Cloud Days 九州 2013/ビックデータ EXPO 九州 2013」の会場入り口の様子
「Cloud Days 九州 2013/ビックデータ EXPO 九州 2013」の会場入り口の様子
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 「ビックデータはストレージサービスではない。データの循環、収集、分析などのプロセスから収益が生まれる」と浦氏は言う。Googleなどの情報検索サービスからMtoM(Machine to Machine)のセンサーデータの活用へと発展した情報ビジネスは、業務から生成されるビックデータを活用して新しいサービスが生まれる時代を迎えつつあると予測する。ここでは、一部の大手企業だけではなく、あらゆる企業にとってチャンスがあると述べる。

 最後に浦氏は、移動体データ銀行の構想を世界に広げ、「九州からグローバルオペレーションを目指したい」と野心をのぞかせた。

 「Cloud Days 九州 2013/ビックデータ EXPO 九州 2013」(日経BP社主催)はクラウドとビックデータの専門展示会で、6月18日と19日の2日間にわたって福岡・博多のFFB HALで開催されている。初日の18日には前回より約350人多い1141人が来場した。

 最終日の19日には、クラウドとビックデータをテーマにしたベンダーによる技術解説のほか、特定非営利活動法人の日本セキュリティ監査協会によるクラウドとセキュリティをテーマにしたセミナー、ビックデータ活用事例紹介などが予定されている。

「Cloud Days 九州 2013/ビックデータ EXPO 九州 2013」の展示会場の様子
「Cloud Days 九州 2013/ビックデータ EXPO 九州 2013」の展示会場の様子
「Cloud Days 九州 2013/ビックデータ EXPO 九州 2013」の展示会場の様子
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■変更履歴
当初、最後から2番目の段落で「前回より約800人多い1141人」としていましたが,正しくは「前回より約350人多い1141人」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2013/06/19 15:40]