写真●明治大学 情報コミュニケーション学部長の石川幹人氏
写真●明治大学 情報コミュニケーション学部長の石川幹人氏
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 高等学校の教科「情報」をご存じだろうか。10年前の2003年度に新設となった必履修の普通教科である。コンピュータや通信の仕組み、インターネットやソフトウエアの利用方法、情報モラルなど幅広い内容を扱っている。

 ところが教育現場では「実際には授業をしていない」「パソコンの実習などが中心で本来教えるべき内容を扱っていない」といった問題が生じている。その理由として、入学試験に教科「情報」を取り入れた大学が少ないことが指摘されている。かつて社会問題となった、「世界史」などの未履修と同じ構図だ。

 こうした中、明治大学情報コミュニケーション学部は、2013年4月に入学した学生を対象に、教科「情報」による入試を実施した。これを推進したのが、情報コミュニケーション学部長の石川幹人氏だ。

 教科「情報」を入試に取り入れた狙いについて石川氏は「学際的な領域を研究する学問の場に、情報技術や情報社会への問題意識を持った学生を確保するため」と語る。

 情報コミュニケーション学部は、社会科学を中心とした文科系の学部で、情報ネットワークを基盤とした情報社会の問題など、多様な分野を教育や研究の対象にしている。

 「例えば、本学部には、メディア表現など表現系のテーマを扱う学生がかなりいる。情報技術のスキルを持つ学生が少数でもいれば、他の学生を技術面で助けることができ、表現についてより深い研究を進められる」。

 石川氏が期待する効果は技術的なことだけではない。

 「プログラミングが上手いかどうかということより、持っている技能を社会で利用できる発想を持っているかどうかを入試では評価したい。今日の高度情報社会においては、専門知識を持つ人と組んで、ビジネスや社会の仕組みの中で、何かを形作っていくことが重要。教科「情報」で入学した学生に触発されて、ほかの学生が視野を広げていければ、学部の全学生が強くなれる」。

 通常、大学入試では、受験生の準備期間を考慮して、数年前に入試の概要を公表することが一般的だ。ところが情報コミュニケーション学部が教科「情報」による入試について広報活動を開始したのは入試の約1年前からだった。