写真●米ヴイエムウェアのマーティン・カサド  ネットワーク担当チーフアーキテクト
写真●米ヴイエムウェアのマーティン・カサド ネットワーク担当チーフアーキテクト
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 「SDN(Software Defined Networking)はイノベーションが大事だ。標準化が早すぎるとイノベーションが阻害される。これからはネットワークの分野でもオープンソースのアプローチが最重要になる」――。

 このように語る米ヴイエムウェアのマーティン・カサド氏は、ネットワークの世界で今最もホットな話題となっている「SDN」の先鞭をつけたキーパーソンだ。

 カサド氏はSDNを実現する上で重要となるOpenFlowプロトコルのドラフトを書いた人物であり、「OpenFlowの父」とも言われている(関連記事:仮想スイッチつなぎ変化に強いネットに、OpenFlowはそのために作った)。

 これまでネットワーク分野の技術については、まず標準仕様をしっかり決めたうえで、製品化が進められることが多かった。ただし、標準化の場ではベンダー企業の発言力が強く、時にはベンダーの政治力によって仕様が左右されることもあった。

 これに対して、「オープンソースは優れたものが残る世界」だとカサド氏は語る。まずは興味深い機能を開発し、オープンソースのコミュニティーにコードを貢献する。それがレビューにかけられ、有益なコードだけが採用される。そしてある時間が過ぎて、最も使い勝手がよい機能が残っていく。事前に仕様を固めてしまう従来のネットワーク技術開発のアプローチとはまさに正反対と言える。

 SDNは、ネットワークをもっとプログラマブルに扱えるようにしていこうというコンセプトであり、ネットワークの世界にソフトウエア分野で見られるイノベーションをもたらす動きだ。したがって、従来のネットワークの世界の文化と、ソフトウエアの世界の文化がぶつかるのはやむを得ない面がある。

 だからこそカサド氏は、ソフトウエアの文化を進化させてきたオープンソースというアプローチに注目し期待する。

 「今後はネットワークを進化させるうえでもオープンソースの取り組みが重要になり、これまでのIETFのようなネットワーク関連の標準化団体の役割は少なくなっていくのではないか」