仕事の引き継ぎは、ビジネスパーソンに付きものである。異動の時はもちろんだが、システム開発に代表されるようなありとあらゆるプロジェクトでも、頻繁に仕事の引き継ぎが発生する。読者のみなさんも、引き継ぐか、引き継がれるかは別にして、一度は仕事の引き継ぎ問題に直面したことがあるだろう。

 にもかかわらず、どの会社やプロジェクトでも、仕事がうまく引き継がれないという現場のトラブルがあちこちで発生している。そのたびに「前任者が悪い」「いや、悪いのは後任者の方だ」と喧嘩になることも少なくないようだ。

 特に、誰かがその部署やプロジェクトを去る時に、問題が噴出するケースが圧倒的に多い。引き継ぎはサラリーマンの常なのに、場当たり的な対応になることはよくある。

 ITproの連載著者で、2013年5月に書籍『プロジェクトを絶対に失敗させない!』を出した著者でもあるマネジメントソリューションズの後藤年成氏も、こうした問題をこれまでに幾度も目にしてきたという。後藤氏は、この問題を7つに大別してみせる。

  • 遅すぎる後任者の指名
  • 引き継ぎ範囲の線引き
  • 後任者の引き継ぎ余力の有無
  • 引き継ぎ時期の代休消化がもたらす余波
  • 引き継ぎ内容のクオリティー
  • 重要な課題の引き継ぎ
  • 引き継ぎ後のコミュニケーション問題

 さて、これら7つの問題で、悪いのは前任者か後任者か。考えてみてほしい。

 勘がいい人は既にお分かりだと思うが、一般的に言って、両者とも悪くないことが多い。悪いのは、この現場やプロジェクトを取り仕切るマネジャーだ。

 「離任日までに引き継ぎをしておいて、よろしく!」。マネジャーが当事者にこう伝えるだけで済ませている現場があまりにも多いと、プロジェクトマネジメントに詳しい後藤氏は指摘する。