写真●エバーノート日本法人会長の外村仁氏
写真●エバーノート日本法人会長の外村仁氏
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 “異業種格闘技”というとちょっと物騒に聞こえるが、その意味は、さまざまな業種とのコラボレーションを通じて新たな出会いを実現し、これまでにない発想で何かを起こすことにある。エバーノート日本法人会長の外村仁氏が、このところよく口にする言葉だ。

 外村氏いわく、「IT業界の中だけで切磋琢磨していてはいけない。日本の産業界がIT業界の進化を積極的に取り入れて、ドラスティックに進化する必要がある」。

 ただし、異業種格闘技は簡単にはできない。技術を持っていても、どの産業に生かせるのかは、なかなか分からないからだ。そこで、外村氏が取り組んでいるのが、ソフト開発のイベントである。

 エバーノートはハッカソン(Hackathon)という開発イベントを定期的に開催している。ハッカソンは「hack(開発)」と「marathon(マラソン)」を合わせた言葉。複数の人たちが一堂に会し、丸一日、場合によっては数日をかけてソフトを開発する。

 同社はそのハッカソン「Evernote Hackathon」を2013年1月25日から27日にかけて、日本で初めて開催した(関連記事『「ITと異業種の化学反応で新サービスを生み出せ」、“異種格闘技ハッカソン”開催』)。

 このとき、事前に提示されたテーマが「クルマがある日常生活を充実させるためのアプリケーション/サービス」で、トヨタIT開発センター(トヨタITC)、ぐるなび、Mashup Awards運営事務局が協賛し、エバーノートを含む各社がWeb APIを提供している。

 2013年5月24日には、エバーノートが主催するアプリコンテスト「Evernote DevCup 2013」のワークショップを開催した(関連記事『音楽×テクノロジーで何が生まれる?Evernoteとヤマハが開発者向けイベント開催』)。

 このイベントにはヤマハが協力し、「Inspire yourself with Music」をテーマに、楽器や音楽とテクノロジーを組み合わせた新しいアプリの世界を約100名の参加者とともに探り、アイデアを出し合った。

 外村氏はこれらを単純なイベントに終わらせない。Evernote Hackathonをスタートアップ企業を支援する場として位置付け、「今後の開発や起業に直結するもの」にEvernote賞を授与する。Evernote賞の賞品は、開発用の機材やサービス、専門家によるメンターシップである。

 こうしてソフト開発というステージから、さらに一歩踏み込み、起業を目指す若手を支援していくという。外村氏自身、起業や起業支援の経験がある。米国シリコンバレーでストリーミング技術の会社Generic Mediaを創業したほか、NPOの起業家支援組織「SVJEN(Silicon Valley Japanese Entrepreneur Network)」を運営したこともある。

 実際、SVJENは起業を支援したり、IPA(情報処理推進機構)の「未踏ソフトウェア創造事業」で選ばれた「スーパークリエーター」をシリコンバレーに連れて行き、ベンチャーキャピタリスト、エンジニアと交流させるなどしている。

 ここ数年は、もっと若い人材、やる気のある中学生や高校生をシリコンバレーに連れて行き、起業についてレクチャーしている。

 異業種格闘技というイベントから、スタートアップする企業が登場し、国内だけでなく、海外に進出していく――日本のIT業界にバイタリティのある企業が登場する可能性はここにある。

根本勝
ITpro編集
 日経バイト、日経MAC、日経CG、日経パソコンの記者、日経ベストPC+デジタル編集長を務めた。パソコン、スマートフォンの技術動向に関心を持つ。