写真●日本テレビ放送網編成局メディアデザインセンターメディアマネジメント部の安藤聖泰氏
写真●日本テレビ放送網編成局メディアデザインセンターメディアマネジメント部の安藤聖泰氏
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 「全世帯にほぼ普及した地デジTVは“原始型”のスマートTVです」

 日本テレビ放送網編成局メディアデザインセンターメディアマネジメント部の安藤聖泰氏はこんな主張をしている。

 スマートTVに厳密な定義はまだないが、従来の放送に加え、インターネット上の各種サービスも使えるものを指すことが多い。

 安藤が一貫して開発を引っ張ってきた「JoinTV」は、すでにテレビ放送とSNSを組み合わせている。

 日本テレビはJoinTVを「テレビとSNSを組み合わせたまったく新しいテレビ視聴感覚を体験できるソーシャルエンターテインメントサービス」と呼んでいる。

 筆者がJoinTVを初めて体験したのは、日本テレビが米フェイスブックの技術協力を得て初めて実施した2012年3月放送の実証実験であった。

 Facebook上の友達が同じテレビ番組を視聴していると、テレビの画面上に「○○さんが視聴中です」というメッセージと一緒に、「友達」の顔写真と名前が表示された。

 番組視聴中にテレビリモコンの「青ボタン」を押すと、Facebook上と、同じ番組を視聴中の「友達」のテレビ画面上の両方に「○○さんがいいね!と言っています」と表示された。

 乱暴な言い方かもしれないが、TV空間とSNS空間という二つの空間が初めて融合した瞬間だと、筆者は感じた。

 冒頭の安藤氏の発言は、2012年6月に行われたデジタルメディアのカンファレンス「IMC Tokyo 2012」において出たものだ。

 JoinTVの実態はサーバー上のコンテンツであり、複雑な処理は全てサーバー上で実現している。コンテンツはデジタル放送向けのぺージ記述言語BMLを使って開発されており、安藤氏はこれを「クラウド型BMLアプリ」と呼んだ。

 つまり、デジタル対応テレビに入っているBMLブラウザと、クラウド型BMLアプリを組み合わせで相当なことが実現できる。だから「原始型スマートTVと十分に位置づけられる存在」だと安藤氏は力説した。

 その上で、「こんな好条件を活用できないような放送局は、スマートTVで視聴者が満足するサービスなんてできるはずがない」と強いメッセージを発信した。

 「好条件を活用」しようと、JoinTVはツイッターとの連携を果たすなど進化を続けており、日本テレビおよび系列局が取り組む主要な番組企画でたびたび登場している。たとえば、金曜ロードショーにおける「ハリー・ポッター祭り」で演出や番組の盛り上げに重要な役回りを演じている。

 テレビ放送業界はスマートTVに加え、ハイブリッドキャスト、4K/8Kなど新しい試みが目白押しである。既存のテレビを活用するJoinTVの活動は、こうした新しい挑戦にいい刺激になるに違いにない。


田中正晴
日経ニューメディア
 日経ニューメディア、日経エレクトロニクスの記者、副編集長などを勤めた。2009年1月から日経ニューメディア編集長。主には放送分野を担当する。