写真●ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所の當仲寛哲代表取締役所長
写真●ユニバーサル・シェル・プログラミング研究所の當仲寛哲代表取締役所長
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 UNIXのシェルスクリプトを使って、大量データを高速で処理する開発手法が流通業などで利用されている。この「ユニケージ開発手法」を提唱するユニバーサル・シェル・プログラミング研究所の當仲寛哲代表取締役所長は、自らプログラムを書く人物だが、もともとはスーパーのダイエー社員でコンピュータとは無縁、コマンドやシェルスクリプトなどはまったく知らなかった。

 情報システムの世界に入るきっかけは、衣料品の改革プロジェクトに呼ばれたことだった。当時のダイエーでは紳士服の販売が好調だったが、それが悪くなりかけた時期だった。店舗や商品部の聞き取り調査をしていく間に「それぞれの意見がバラバラ」なことに気づいた。

 人は自分が見たものや経験したものを基準に意見を言う。会社が大きくなればなるほど、分業になり経験範囲が限られるため、意見がバラバラになってしまう。根拠が違うから結論も違う。方向性を合わせていくのは大変だ。

 こう考えた當仲氏は次に“情報”という言葉に引っかかった。判断の根拠となる数字をとってもみても、人によって見方が違った。過去のデータから意見を言う人もいれば、直近の売り上げデータや在庫から意見を言う人もいる。

 情報については素人だったが、「情報の見通しが悪いのが原因だ」と感じたという。

 当時のダイエーはホストコンピュータからいったんデータを紙に出力すると、1カ月後には消してしまっていた。これでは前年度のデータを見たいと思ったとき、紙をひっくり返さないと出てこない。分析するには、手作業で集計したり、紙に打ち出したものを集計ソフトに打ち直したりしていた。

 「どんな商売の天才でも、情報を扱う作業に忙殺されて正しい判断ができない。ここにメスを入れて皆が同じ情報を手軽に見られるようにする。それが改革の第1歩だ」。

 當仲氏はこう考え、情報の改革に本腰を入れ始めた。そして当時、情報活用の先進事例として評判だった、医薬品の輸入販売会社「ファルマ」のシステムを見学し、驚かされた。ファルマから学んだ考え方を當仲氏は次のように語る。

 「大事なのは情報の自由度、出力の自由度。それらを実現するには過去のデータを全部ファイルに残しておく。そして、セレクトやソート、サムアップ、マッチング、項目演算といったツールを準備し、組み合わせていく。そのためにはファイルを整理しておくこと。ファイルの整理をきちんとしていれば、いつ何時こういう情報が欲しいと言われても対応できる」

 ファルマは以上の思想に基づき、三菱電機製オフコン上の簡易言語を使ってツールを用意していた。大量のファイルを順番に加工して出力するバッチ処理だったため、処理に時間が掛かったが、利用者は待っていた。本当に必要な情報が出てきたからだ。