
「SEにとって、百年に一度のチャンスが来た。これからはSEの時代だ」
この6月、情報サービス産業協会(JISA)の副会長に就任した横塚裕志氏はこう語る。横塚氏は保険会社のシステム部員として社会人のスタートを切り、CIO(最高情報責任者)を経て、システム関連会社の社長を務めてきた。
横塚氏の言うSEとは、システムの企画・開発や運用・保守に携わる人全体を指す。ユーザー企業のIT部門やシステム関連会社に所属する人も、JISA会員のシステムインテグレータやソフトハウスに所属する人も、システムに関わる仕事をしているなら、すべてSEと呼ぶ。
「SE一筋40年」というのは横塚氏が自分に付けたキャッチコピーだが、その40年間、横塚氏はユーザー企業側にいた。6月以降、JISA副会長としてIT業界側の立場になるわけだが、すべてのSEにエールを送る姿勢に変わりはない。
SEにとってなぜ今がチャンス到来なのか。横塚氏は「世の中に存在しない新たな商品やサービスを生み出すことがこれからの企業には必要。それにはSEが欠かせない」と説明する。
「未知の商品やサービスの創造に挑む時、商品開発や営業企画といったビジネスサイドの人たちだけではビジネスモデルやビジネスプロセスを決められない。SEとビジネスサイドの人たちが一緒になって考えるしかない」。
新しい商品やサービスをつくるにあたって求められるのが、物事を論理的にとらえる力であり、ビジネスモデルを具体的なビジネスプロセスに落とし込む力だ。この力をSEは持っており、まさに出番だと横塚氏は言う。
「日頃からシステムの開発に取り組んできたSEは論理的な思考力が鍛えられている。しかも、SEは研究、製造、営業、経理、人事といった様々な組織のシステムを開発し、運用してきたから、組織間の関連や全社の業務の流れを俯瞰できる」。
だからこそ、SEは全体最適の観点から新たなビジネスプロセスを描くことができるというわけだ。これはSEがビジネスの表舞台に立てる機会にほかならない。だから横塚氏はチャンスと言っている。
横塚氏は自身のSEとしてのキャリアを次のように振り返る。「2000年以前は、システムを開発する目的は、効率化やコスト削減が中心だった。そのころは、作れば必ず使ってもらえると何ら疑うことなく、ひたすらシステムを設計、開発してきた」。
新たななビジネスをつくるというより、ビジネスサイドが決めた既存のビジネスをいかに効率よく進めるか、もっぱらSEはそれを考えてきたことになる。ただし、要件はビジネスサイドが決め、SEはそれをシステムに実装するという役割分担である限り、SEに光が当たりにくかった。
横塚氏の主張を聞いて「チャンスどころか、仕事や責任が増えてますます大変になる」と困惑するSEがいるかもしれない。だが、それだけやりがいがあるということでもある。
だからこそ横塚氏は「今はチャンス」「前向きに頑張ろう」と、これからの時代を担う日本中のSEにエールを送るのである。
日経コンピュータ