ARの進化を見通すための四つの技術トレンド。今回は、「AR向けAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)」と「建築用3Dモデル『BIM』」を紹介する。

ARアプリの構築を容易に

 ARのアプリやサービスを構築しやすくする要素技術の標準化も進む。前述のグーグルは、GoogleGlass向けAPIである「Google Mirror API」を2013年3月に発表。同APIを使うと、企業や個人がスマホアプリを開発するのと同様、Google Glass向けアプリを簡単に開発できるようになる。端末にアプリをインストールするのではなく、グーグルのサーバーを介してAPIでアクセスする。

 ARでは現実世界の認識に、加速度センサーやGPS(全地球測位システム)、Kinectのような距離を認識できるセンサーなどを用いる。それらの情報をOSに依存しない形で扱う標準APIの策定も進む。「OpenGL」などの業界標準APIを手掛ける米クロノスグループは、「StreamInput」と呼ぶARなどでの利用を想定したセンサー情報のAPIを策定中だ(図1)。

図1●クロノスグループのセンサー処理向けAPI「StreamInput」
図1●クロノスグループのセンサー処理向けAPI「StreamInput」
カメラやGPSなどARに必要となる各種センサーの情報を、OSに依存しない業界標準のAPIとして提供する。センサー情報は特徴抽出し、統合した形でアプリケーションに提供する
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 現在、3D CGの描画用APIとして、iOSやAndroidなど数多くのOSでOpenGLが業界標準として使われているが、StreamInputが策定されれば、センサー情報に関してもOSを問わず共通のAPIで扱えるようになる。

建築物のメンテにも活用

 将来、ARの利用を加速する役割を果たしそうなのが、ビルなど建築物を構成する設計情報を3次元で電子化したデータ「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)モデル」だ。

 BIMは3D CADの設計データに加えて、建材の材質や製造元、型番などの属性情報も付加したものである。製造業でいう「BOM(部品表)」の建築版であるといえる。配水管や電気設備などの設備、柱などの構造、外観などの意匠の3種類から成る。

 BIMは建築業界で急速に普及しており、大林組は2015年末までに同社が設計施工を担当するプロジェクトの8割でBIMモデルを用いる計画だ。

 BIMモデルは建築物の設計に関する詳細な電子データであるため、BIMモデルを備えた建築物が増えれば、建築物の内外で精度の高いARシステムを容易に構築できるようになる。