精度が向上したARに目を付けたのは前回紹介したユニクロだけではない。建築分野や製造分野でも、ARで仕事の進め方が変わりつつある。

メーカー50社がデータ提供

 建材や住宅設備のシミュレーションにARを採用したのが、ペーパレススタジオジャパンだ。2013年4月から、窓やドア、便器など建築設計で用いる3DデータのARサービスを始めた。

 このサービスを建築士やインテリアコーディネータなどが使うと、施工後のイメージを視覚的に把握しながら、建物や部屋をデザインすることができる。例えば、トイレを設置するシーンがあったとしよう。建築士は設置場所の床に「マーカー」を置き、タブレットを介してその場所を見てみる。すると、タブレットで撮影した映像に、CGで再現されたトイレが映し出される(図1)。

図1●住設機器をARで表示するペーパレススタジオジャパンの「ArchiSymphony」
図1●住設機器をARで表示するペーパレススタジオジャパンの「ArchiSymphony」
ペーパレススタジオジャパンが手掛けるクラウドサービス「ArchiSymphony」では、住設・建材メーカーから提供を受けた3DのCADデータを用いて、住設機器をiPadの画面上にシミュレーション表示する
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 「建材や設備のスケール感などは、建築士のような専門家でも2次元の図面上では把握しにくい。ARを使えばイメージしやすくなる。施主などにも設計意図を伝えやすくなる」。ペーパレススタジオジャパンの勝目高行社長は、ARの利点を説明する。

 建築業界では、ここ数年で設計の3D化が進んでいる。住設メーカーが自社の製品について3DCADデータを一部公開するようになり、メーカー純正のデータを基にしてARで正確な表示ができるようになった。ペーパレススタジオジャパンは、メーカー約50社から建材や住設のCADデータの提供を受け、ARサービスを実現した。