中堅ソフトウェア会社のTDCソフトウェアエンジニアリングは、受託開発ビジネスとは違う新たな事業展開に取り組んでいる。このために不可欠だったのが、人材教育への投資だ。

 ITサービス市場は、プロジェクト規模の小型化、開発期間の短縮といった変化にさらされている。そこで新たな対策として、今までとは異なる事業を拡大しようとしている。その事業は、自前の商品を中核にした「ソリューション型ビジネス」。SaaS/PaaSを核とするクラウドサービスである同社の「Trustpro」と、基幹業務システムとスマートフォンとの間で情報連携できるようにする同社のツール「HandyTrust」が、ソリューション型ビジネスの中核だ。

写真1●TDCソフトウェアエンジニアリングの谷上俊二社長

 2012年度の売上高は170億円だが、ソリューション型ビジネスは20億円に達した。谷上俊二社長は「15年度の売上高目標は250億円。このうちソリューション型ビジネスを40億円に伸ばしたい」と意気込む(写真1)。

計画を達成するため、同社は従来と異なる教育制度を13年度からスタートさせた。通常、ソフト会社が技術者に対して実施する教育はデータベース技術や言語など、開発技術に関するものが主体。受託したソフトウエアの開発業務を効率的に行うことが目的だ。

 これに対して同社が始めた教育は、自社の製品やサービスを開発するための技術や他社製品を調べ、ソリューション型ビジネスとして取り入れること。つまり、明日のための投資といえる。具体的には、約20人で「プロフェッショナルサービス部」という組織を設置し、同部の運営費用の30%を管理費用と位置付け、新しい技術や製品の調査・研究に当てるようにした。谷上社長は、「コンサルタントの場合、1年のうち8~9カ月間でコンサルティングの業務を行い、残りの時間は充電に当てる。そういうイメージで業務している」と話す。

ハンズオンセミナールームを開設

写真2●ハンズオンセミナールームで顧客との密度を高める
写真2●ハンズオンセミナールームで顧客との密度を高める
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 顧客に対する情報発信力の向上にも費用を投じた。移転したオフィスに、「ハンズオンセミナールーム」を設置した(写真2)。

 ここでは、製品やサービスを顧客が触ることができるので、「ここをこうできないか」と顧客の問いかけに答えるプロセスが商談そのものになるという。

 「いかに営業に経費をかけないで受注するか。それが受託開発型事業で収益を上げる考え方。しかしソリューション型ビジネスでは、営業費用をかけるなかで利益を確保するビジネスモデルをつくることが必要」と谷上社長は話す。ハンズオンセミナールームの開設は営業強化への投資にほかならない。

 既にソリューション型ビジネス拡大の芽は見えている。10万人のユーザーが利用するシステムを、Trustproを提案して受注したのがその一例だ。今後は、ビッグデータやソーシャル技術を同社が得意とする基幹業務システムと連携させて、新たなソリューションとして仕上げていく。