東京・丸の内の新名所としてにぎわう「KITTE(キッテ)」。日本郵便が旧東京中央郵便局の一部を保存して建設したJPタワーに開設した商業施設だ。今春、ネットワンシステムズは、東京駅を見下ろすこのJPタワーに、経営企画部門と営業部門を品川の拠点から移転。フリーアドレス制を採用し、現在はグループ企業も含めて900人の社員が働いている。

写真1●ネットワンシステムズの篠浦文彦執行役員

 オフィス移転と同時に刷新したのがICTインフラだ。BYOD(私物デバイス活用)導入を促進するため、データを端末に残さないVDI(仮想デスクトップインフラ)技術でセキュリティを確保。Windows系のノートパソコンに加え、MacやiPadなど自分が使い慣れたデバイスからサーバーにアクセスし、自宅を含めた社外で情報共有や資料作成できるようにした。

 さらに、チャットやWeb会議も活用し、コミュニケーションの効率化を進めた。オフィスの賃貸料もICT投資額も「かなりの金額」と篠浦文彦執行役員は話す(写真1)。

 ワークスタイルを変えようと検討したのは2年前。業績は好調だったが、「5年後に成長している姿が描けなかった。我々自身、昔ながらの働き方を変えなければ成長はない」(篠浦執行役員)と危機感を抱いていた。

 背景にあるのは商談の中身が変化していることだ。従来の商談では「このシステムを任せる。計画をつくってほしい」と同社に対して顧客が丸投げするケースが多かったという。しかし現在は異なる。顧客のITリテラシーが向上しているなど、要求に応じて計画を作成すれば受注できるわけでない。そこで「顧客に対して提供するケーパビリティを高めると同時に、営業のスタイルを変えるなど我々のワークスタイルを変えよう」(篠浦執行役員)と考えた。

 同社のワークスタイル変革の特徴は、ICTインフラの刷新とオフィスの移転をセットで実行したことだ。情報を電子化して共有する仕組みはあったものの、紙に印刷してキャビネットに収納するだけの社員もおり、情報共有が徹底できていなかったという。それをオフィスの移転で一変させた。新オフィスにはキャビネットが存在しない。法令で紙の保存が義務づけられているもの以外、端末を通じて共有・活用できるようにした。