「あー、ここ分からないや」「そこは、これこれこうして……」――。
子供向けに定期的に開催されているプログラミング教室「CoderDojo」での一幕だ。参加する子供は小中学生である。毎回3~4名が参加し、HTMLやJavaScript、教育用プログラミング環境のScratchなどを勉強している。
CoderDojoでは、特定のテーマに沿ってボランティアがプログラミングの講義をする。子供たちが自分でやりたいことをプログラミングで表現し、分からないことがあればボランティアに教えてもらう「寺子屋」と題した開催日もある。寺子屋の日には子供同士が分からないところを教え合うことも多い。
CoderDojoはアイルランドが発祥で、欧米で活動が繰り広げられている。国内では2012年5月に第1回CoderDojoが開催され、現在は旭川市、岡山、沖縄、東京など8カ所で実施されている。東京の開催場所は主に下北沢オープンソース・カフェだ。ここは、国内でCoderDojoを始めたメンバーの一人、河村奨氏が運営するコワーキングスペースである。
河村氏らと国内でCoderDojoを始めたつくる社の石原淳也氏に話を聞いた。
「日本は人口が減っていき、生産力が徐々に落ちていく。その流れの中で、パソコンや電子黒板などのハード面だけでなく、北欧などが成功しているように教育によってソフト面を充実させないといけない。これからは『読み・書き・プログラミング』の時代だと考えています。教えると言っても詰め込むだけではだめで、アウトプットして表現できる場が必要です」。
1972年生まれの石原氏は7歳までフランスのパリで過ごし、東京大学工学部機械情報工学科を卒業してから、2000年より4年間、Genesys Telecommunications Laboratories(米サンフランシスコ)にてソフトウエアの国際化エンジニアを務めた。帰国後の2005年、ウノウに入社、2006年からフリーランスとして活動している。
2010年6月に、つくる社を設立し、現在は「スマホを持って謎解きにでかけよう!」がコンセプトのスマートフォン向けフィールドゲーム「まちクエスト」を開発中だ。
そのかたわらボランティアとして、小中学生にプログラミングを教えるCoderDojo Tokyoの活動も続けている。
寺子屋の見学に行った日、子供たちはScratchを使って、昔なつかしのドルアーガの塔やゼビウスもどきのゲームを作って遊んだり、カメラに写った手の動きに合わせてScratchのマスコットキャラクターが画面内を動くプログラムを作ったりしていた。恐れ入る。
……あと10年もしたら、この場所から世界に名を馳せるプログラマーが生まれるかもしれない。
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