中学生のスマートフォン利用に関するアンケートが予想以上に好評のようなので、引き続き最新のデータを紹介することにした。

 筆者らは、2012年冬に「ネット上のふるまい調査」というアンケート調査を、大阪府と滋賀県の中学生1362人を対象に実施した。アンケートではネット上での「被害」経験と「加害」経験などを質問したが、その結果からは意外な事実と示唆に富む結果を得られた。

 これまでの子供とネットにかかわる調査では、どちらかというと子供たちが被害を受けたことに焦点をあてたものが多かった。そこで今回はアンケートから見えたネット上での「加害」についてまとめてみた。

図1●ネット上の“犯罪に該当する行為”の経験

 図1は回答をした中学生1362人のうち、一度でも“犯罪に該当する行為”を経験したと答えた比率である。生徒たちには、アンケートの収集にあたって当該行為が犯罪であることはあえて伏せて、やったことがあるかどうかについて回答を求めた(回答を受けた後、正しい知識を詳細に説明した)。

 回答結果からわかるように、1割を超える男子中学生が、犯罪に該当する行為をしてしまっている。女子も男子よりも割合は低いとはいえ、少なくない人数がこれらの行為をしていると答えた。具体的には、ネットを通じて、「名誉毀損罪」や「侮辱罪」をにあたる行為をしてしまう場合が多い。

ネット上に横行する「名誉棄損罪」と「侮辱罪」

 「名誉棄損罪」は、刑法第230条1項で「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」というものである。つまり「A子は援助交際してる」、「B男はカンニングした」などの事実(ただしその事実の真偽は問われない)を公然と示すことで名誉を毀損する行為である。

 公然とした事実を適示せずに、例えば「C子はウザい」、「D男は気持ち悪い」といった評価・判断を示す言葉で公然と人を侮辱する行為は「侮辱罪」にあたる。ネット上の掲示板などにある悪意のある書き込みは、たいていこのどちらかにあたる(ただしどちらも、被害者が犯人を知ってから6カ月以内に告訴することが成立要件となっている「親告罪」である)。

 2005年に男子高校生が、本人に代わってネットに書き込みをするなどして、名誉毀損罪で逮捕されたという事件があった。高校生を対象とした講演会の際に、筆者はこの事件の詳細を示して、犯罪の可能性があるかどうかを聞くことにしている。関西の公立高校1年生の場合、「犯罪の可能性がある」と答えた生徒は22.0%で、全体の4分の1に満たなかった。

 実際に逮捕された事実を伝えると、生徒たちからどよめきが起こったほど。中にはあからさまに「やばい」という表情をする生徒もいた。もしかすると、似たようなことをした覚えがあるのかもしれない。