写真●DeNA システム基盤責任者 茂岩祐樹 氏
写真●DeNA システム基盤責任者 茂岩祐樹 氏
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 「Mobage」をはじめとするディ・エヌ・エー(DeNA)のネットサービスを長年にわたり支え続ける。システム基盤の責任者、茂岩祐樹氏の仕事はそれだ。

 DeNAのようなコンシューマー向けサービスは利用者数がもともと多く、しかもある日突然、急増することがある。利用者急増の修羅場を潜り抜けた経験を持つ茂岩氏に、ITエンジニアがなすべきことを聞いたことがある。

 「『動く』と『動き続ける』は大きく異なる。システムは動き続ける。そのことをどこまで考えるかだ」と茂岩氏は話してくれた(関連記事)。

 どういうことか。例えばデータベース(DB)アクセスのプログラムを開発することを考えてみよう。「動くシステム」を考えると「DBに接続して正しい値を取り出す」となる。だが「動き続けるシステム」では、それだけでは済まない。

 利用者が増えればDBを分散するかもしれない、キャッシュを持つかもしれない。システムはいつ急成長するか分からない。成長させたときのことを考え、少なくとも成長を阻害するような作り方をせず、想像力を働かせて将来の拡張を取り入れやすくしておく。これが「動き続けるシステム」まで考えるということだ。

 そんなことができるのだろうかと思う人もいるだろうが、取材を重ねていくと「あの人の設計・開発したシステムはすごい」と言われる人たちがいる。茂岩氏はその一人である。

 そうした人たちの設計・開発したシステムは、無理なく長く使える。ビジネスの変化に合わせてスケールすることを想定し、後から分散させても無理なく動く。

 それができるのは、そこまで想像力を働かせていたからだ。作ったときにはそのすごさは見えづらいので、ともすればあまり評価されないが、長く使うとその価値が見えてくる。ITエンジニアの仕事は実に奥深い。

 DeNAがこれから世に出していく各種サービスには、茂岩氏の想像力が形になって入っているはずだ。


松山貴之
日経SYSTEMS
 ITアーキテクトの重要性に注目し、IT現場で活躍するITアーキテクトを増やすことに取り組む。2011年7月より日経SYSTEMS編集長。